Chapter2
Chapter2―マリンスノーとスノーシュガー―
非日常編
不明熱が出始めてから早幾日か。極端に性格が変わる者、抑えていた感情をこぼす者、純粋に体調が悪くなる者など、様々な反応がコテージのあちこちから聞こえてくる。
命に関わる状態とまではいかずとも、発熱が続けば体力は消耗し、元気な若者であろうと徐々に弱っていく。
モノボウズ
「とりあえず熱を下げないことには、食事も取れないし眠るのも
お辛いでしょう。特別に効能の強い【解熱剤】をお持ちしました」
そう言ってモノボウズが用意したのは、カラフルなキャンディのようなものが入った瓶だった。
芍薬ベラ
「ま?きらきらして映え~まじあがるわ~」
物造白兎
「お薬なんて嫌いですぅ…ぐすっ、にがいのやです~!!」
沙梛百合籠
「苦いならゼリーに包めばいいぜ!昆虫用ゼリーでいいか!?」
アヴェル
「甘いのじゃなきゃやだ~!!」
モノボウズ
「そういう皆さまのために、味は各種フルーツ味に調整しました。
いちご、ブドウ、オレンジ、パイナップル、桃…甘くておいしいですよ。
コテージ近くに保管ボックスを置いておくので、ご自由にお取りください」
栂木椎名
桜春もち
御透ミシュカ
「味とかどうでもいいから、早くもらえないかな…」
「もっちゃんはどこも悪くないです!!」
「あたしの方がもっと美味しいもの作れるよ。ねぇどうしてみんなそんな
怪しいもの飲もうとするの?だめだよ、皆はあたしが作ったものを食べて
あたしが幸せにしてあげなきゃいけないんだから、ね?わかるでしょ??」
大賭清一
「ひでぇ光景」
角沢才羅
「とっとと罹患者はコテージにぶち込めよ」
大鳥外神
「びょ、病人には優しく…ね…?」
君野大翔
「皆、寝とかなくていいのかい…?」
病気な人ほど自覚がなく、無茶をして余計にこじらせてしまうものだ。皆は呆れつつ、罹患者をなだめながらなんとか生活していた。
むしろ、今の生活の方が平和だ。病人の相手は大変だし、そっちに気をとられてコロシアイの事を考えなくて済む。看病という名目で人の傍にいられるし、自分は良いことをしていると言い訳が出来た気がした。
姫宮蝶子
芍薬ベラ
良田アリス
螺河鳴姫
「はい、薬を飲みやすいようにゼリーに包みましたから。
後でチョコムースも持ってきてあげるから、大人しく寝てください」
「お風呂入るのが大変だったら、アリスがお背中流すの手伝ったげるね!」
「髪がぼさぼさになっちゃってるね…結んであげるから座って。
皆お気に入りのリボンがあるだろう?」
「昇天ペガサスMIX盛りでよろ!」
モノボウズ
「食事はコテージに届けていますが、お野菜を残される方も多いですね…。
フルーツの配達サービスもお付けしましょう。
ビタミン、ミネラル、糖、しっかり取っていただきませんと」
姫宮蝶子
「そういうところのサービスはしっかりしてるんですね…」
物造白兎
桜春もち
良田アリス
「もっちゃんパイナップルいらないのです!
体かいかいだし、お腹も痛くなるのです!ぷんぷん!!」
「アリス、あま~くてかわい~い苺だけでいいよ♡」
「ニンジンが欲しいのです~…ニンジンは果物ですぅ…」
姫宮蝶子
「この偏食家の方達は…まったくもう!」
解熱剤とフルーツをしっかり取らせ、早々にコテージに押し込むように休ませる。そして翌日には、少しすっきりした顔の面子を伺うことが出来た。
芍薬ベラ
物造白兎
沙梛百合籠
「うー…まだだるいけど、1人は寂しいのですぅ…」
「おう、それなら外で虫とろうぜ!!
ビニールハウスに使えそうな道具や農薬が揃ってんだ!!
「それありよりのあり~ちょうちょとチェキ決めちゃおっか!」
らぶり『(少しほっとした表情)』
螺河鳴姫
大賭清一
良田アリス
角沢才羅
大鳥外神
「誰かあいつら見張ってろ」
「言い出しっぺの才羅君が見張ったら?
ほら、ほら、今日もいい天気だし、海辺に皆でお散歩行こ」
「うーん…心配だし、僕もついて行こうかな…」
「そういや、この島クラブがあるんだってね。どういうクラブなんだろねぇ♪」
「軽くゲームしたりお酒飲んだりできる程度のものみたいだね。
息抜きの丁度いいんじゃないかな」
姫宮蝶子
御透ミシュカ
君野大翔
御透ミシュカ
「あたしはまだ寝てる…しんどい…お粥もあきた…まぢ無理…不貞寝しよ…」
「それじゃあ、カフェでなにか軽食セット作ってもらって、持ってくるよ」
「たくさん運ぶのは大変でしょう?お手伝いしますよ」
「ほんとっ!?うれしい!大翔君も蝶子ちゃんも好き!皆だい好き!」
アヴェル
桜春もち
栂木椎名
「僕は寝てよう…今出かけたらぶり返しそうだ」
「アタシも…」
「もっちゃんはお散歩するです。家の中は窮屈です!!」
まだまだ本調子とは行かずとも、それぞれのペースが少しずつ戻ってきたようで、以前のようなパニックになることはない。
結局熱の原因は分からなかったが、流行り熱というのは大体そういうものだろう。
姫宮蝶子
君野大翔
姫宮蝶子
君野大翔
「この島に来る前も、一時流行病とかで騒ぎになりましたからね…」
「ああ、いつの間にか話題にならなくなったよね。
流行が終わったのか、皆慣れちゃったのか…」
「ああいうものは、話題にならないからと言って油断してはいけませんよ」
「はは…肝に命じておくね」
▼海辺
本日も青い空の下、海辺で波の音にまざって子供のはしゃぐ声が聞こえる。時折ため息が混ざるが、その声もそこまで悲嘆にくれたものではない。
角沢才羅による自然教室(なお勝手に彼の周りに集まっただけで、本人はそんなつもりはまったくない)で海の生き物を眺めつつ、時に手を伸ばしていた。
芍薬ベラ
角沢才羅
「カニさんきゃわ~ピースでツーショしよしよ~」
「それはスナガニだ。臆病で警戒心が強いから、そっとしとけ」
沙梛百合籠
角沢才羅
「うおおお!カブトムシゲットだぜ!!!」
「それはカブトガニだ。名前しか被ってない。見た目が全然違うだろ!」
物造白兎
角沢才羅
「ビニール袋が落ちてるです、環境汚染なのですぅ…」
「馬鹿、触るな!猛毒のカツオノエボシだ!」
良田アリス
角沢才羅
「環境汚染…あかしおのげんいんはのくちるかというぷらんくとんが
いじょうはんしょくし…」
「図鑑をそのまま棒読みするな。意味が分かってないなら読むだけ無駄だ」
角沢才羅
大鳥外神
角沢才羅
大鳥外神
「…皆よく生き物を素手で触れますね…」
「そういうあんたは、少しはパラソルの外に出て日光浴びた方がいいだろ」
「この年になると、日光だけでもきつくて…あと海とか無理で…」
「その気持ちは分からんでもない」
▼海洋研究所
青い光に包まれた水槽が並ぶ、幻想的な光景は見ている者を癒す。ゆったりと流れる水と共に、穏やかで静かな時間が流れていた。
物造白兎
沙梛百合籠
良田アリス
「きれいねぇ、海の中の人魚姫になった気分!」
「喉乾いたのです…ジュース…」
「炭酸ジュース、モノボウズにいってもらってきた!
トロピカルシリーズ、チェリーパインオレンジベリーメロン…
一番レアはドリアン味だ!!」
姫宮蝶子
「それ、絶対に開けないでくださいね」
君野大翔
「子供たちは元気だな…
俺も小学生の頃は、まだ普通に子供として遊んでたっけ…」
姫宮蝶子
物造白兎
沙梛百合籠
良田アリス
「わー!ジュース零したのです!!わりぃなのです!!」
「きゃー!服にかかっちゃった!」
「運ぶのに集中しすぎて振り回しちまったみたいだな!すまん!!」
「わぁ、すごいパイナップルの香り…って、早く洗わないと染みなりますよ!」
君野大翔
「…あそこまでおてんばはしてなかったかなぁ…」
▼海洋研究所 別エリア
両手に段ボールを抱えながら、大きな水槽のエリアを歩いていく。水槽の上は管理区域として屋外と繋がっており、モノボウズ曰く餌やりの体験も出来るらしい。
御透ミシュカ
「ふぅ…熱が下がったら、冷静になったかも…。
なんだか恥ずかしいことを言ってたような…」
大鳥外神
御透ミシュカ
「落ち着いたようで良かったです…。これはこっちに運んだらいいですか?」
「うん!工房があるから、アクアリウム用に飾りをいれた水槽を作ったの!
やっと持ってこれたよ」
段ボールの中からはかちゃかちゃと軽くガラスの揺れる音がする。そんなに重くはないが、病み上がりの体が心配だと外神と半分こにして足取りは軽かった。
御透ミシュカ
大鳥外神
御透ミシュカ
大鳥外神
「それにしても、こんなに立派な研究所があるなんて…
この島の管理人さんって、どういう趣味なのかな?アクアリウムの延長?」
「島の管理ともなると、海のこともある程度把握しておきたいのかも
しれませんね」
「あ、マリンスノーが展示してある!スノードームみたいで綺麗でステキ…」
「こう暗いと光が恋しく…おや、あっちの水槽は明るいみたいだね」
その水槽は、管理区域の蓋が締まっていないようで日差しが差し込んでいた。
差し込んだ日差しはゆらゆらと水の中で不思議な模様を描き、水槽の中を明るく照らし出す。
音を飲み込む水はどこまでも静かで、幻想的で、白い手と足をヒレのように漂わせて。
御透ミシュカ
大鳥外神
「っも…もち、ちゃっ………」
「これ…は…っ」
らぶり『…………!!さ、桜春さん……。』
おとり『へぇ…あのバカ女、おっちんだのか。いい気味だ』
水槽の中に漂う肢体の美しさは人魚を彷彿とさせた。そしてそれ以上の猛烈な違和感に、言葉を喉でせき止めた。
手から零れ落ちた段ボールが床にたたきつけら、中のガラスが割れる音が悲鳴の代わりに研究所に響いた。
『死体が発見されました。場所は海洋研究所。ただいまより捜査時間となります。捜査後に裁判を行いますので、皆さまの奮闘を期待しております』
無慈悲に告げられるアナウンスに、ついにミシュカがぺたりと座り込む。隣で呼びかける外神の声も届かないのか、水の中で眠るもちを呆然と眺めていた。
大鳥外神
君野大翔
栂木椎名
螺河鳴姫
「さ、最悪だ……は、はやく引き上げて…!」
「さっきのアナウンス……もしかして、また、遺体が上がったのか?
……冗談きついな、もう……」
「あのアナウンス……!」
「アナウンスがあったということはもう…間に合わないんだよね…。」
モノボウズ
「皆さまの熱も下がり始めて、やっと安心しておりましたのに…
どうしてこのようなことに…」
姫宮蝶子
「また何か貴方が仕掛けたんじゃないんですか…!?」
モノボウズ
「私達は確かに殺し合いを強要しましたが、何もこんな時にまで
言いませんよ。熱で死なれては困りますので」
モノボウズ
「しかし事件が起きてしまっては、見ない振りは出来ません。
病み上がりで大変でしょうが、捜査を開始してください」
物造白兎
「...どー..して」
大鳥外神
良田アリス
「また、なにもできなかった……」
「なんで…もちちゃん…」顔を覆っている
やっと持ち直しかけた空気が、また崩れていく。どれだけ砂でお城を作っても、さらさらどろどろと崩れてしまうように平和は長く続かない。
二度目の事件を前に、ただ立ち尽くすしかできなかった…―――。