Chapter3
Chapter3―少年少女だった日の思い出―
非日常編
夏もいよいよ本番で、軒下に吊るされたプランターには花が咲き艶やかに色づき、夏の風が過ぎ去りそよぐ音が心地よい。
秘密の手紙が配られてから数日が経った。その秘密を大事そうに抱える者もいれば、気にせず以前と変わらず過ごす者もいる。
妙にアンバランスな空間の中、沙梛百合籠は涼しい顔をしてお茶を飲んでいた。
このコロシアイの元凶…と言っていいのかは分からないが、モノボウズ達が探していた落とし主であると判明してからも、彼女の言動は変わらない。
寝起きに大きく伸びをして、のそのそと着替え、コテージを一歩出て上空を見上げ目を細め、風を浴びたり虫を探したり何もしなかったり。
「アンプル」「矢継橋美録」という新たな謎をばらまいておいて、その答え合わせを彼女はしてくれない。そんな彼女を誰も責めることはない。
責める元気もない、という方が正しいか。続くコロシアイに秘密を握られている不安、その矢先で突如現れた落とし主の正体。
すでに皆の疲弊はピークに達していた。
アンプルとは何なのか。モノボウズが災厄と呼ぶ程に恐ろしいものなのか。それを持っていた矢継橋美録の正体は。何故それを百合籠に託したのか。なぜ美録は死んでしまったのか。百合籠はアンプルをどこに隠したのか。
考えても考えても答えはまとまらない。しかし落とし主が見つかったことで殺し合いがもう起きない、と言う安堵も確かにあった。
▼カフェ
沙梛百合籠
「……本当、つまらない場所。ここの何処が楽園なのかしら」
紅茶を置いて退屈そうに海を眺め、潮風に髪が吹かれる。彼女の眼には輝く海と広々とした空になんの感動も映さない。ただそこにあるだけのモノクロのキャンバスだ。
声を近づけがたくなってしまった彼女の対面の席で、金色の髪がぴょこっと跳ねた。
良田アリス
「あ、百合籠ちゃんだー!ねーねー百合籠ちゃん。みろく、ってだーれ??」
こてりと首をかしげるアリスも、また以前と変わらぬ生活を送る者の1人だ。子供だから事の深刻さが分かっていないのか、自分の秘密に心配がないのか、無垢な瞳は百合籠を見つめている。
沙梛百合籠
「あの子について知りたいの?……まあ、少しぐらいなら良いでしょう。
美録ちゃんは私の大切な人よ。今はもう居ないけど……ね。
何年か前に彼女は死んだわ。どこで何があったのかは私も知らない……」
良田アリス
「その人からもらったものを、百合籠ちゃんが持ってきた…それでモノボウズが
怒っちゃったんだよね。なんなんだろうね、アンプルって…」
沙梛百合籠
「さあ……?私も中身は知らないの。
ただ……あの子の事だし、人に害を与えるようなものではないと思うわ。」
良田アリス
「ん~そうなの?でも、モノボウズは危ないものだって言ってたし…
うーんうーん…アリス、わかんなくなってきちゃった」
眉間に皺をよせてうんうんと悩む様子のアリスの様子を見て、百合籠は軽くため息をつく。すっかりぬるくなった紅茶を口に運び、無知な子供を見つめる。
沙梛百合籠
「これまでの光景を見てきても尚、貴女はモノボウズを信じるというの……?
少なくとも私には出来ない選択だわ……」
良田アリス
「アリスからしたら、コロシアイを進めるモノボウズも、コロシアイの
原因だと分かっているのに黙っている百合籠ちゃんも、どっちも怪しい
もん。だから、どっちも信じるよ!どっちも悪くないんだよきっと!」
どちらも怪しい。どちらも悪い。どちらも悪くない。子供らしい単純な思考、単純な結論。安易で理想的で平和的なことしか見えていない。
子供ならではの愚かさと純粋さを混ぜたような声に、今度は百合籠が首をかしげた。
沙梛百合籠
沙梛百合籠
「どっちも悪くない?いいえ、悪いのは奴等よ」
「貴女の……そうね、仮にお父様としましょうか。
貴女がお父様から『何があっても大切に預かっていて欲しい』と渡された
物があるとしたら、おいそれと他人の手に渡すかしら?
それが原因でコロシアイが起きたとしても、よ……」
良田アリス
「パパから?なら渡さないよ!だってパパが渡しちゃダメって言ったなら、
絶対だめだもん!パパはすごく優しいし、悪い事なんてしないもん!」
そこまで言って、アリスは数度瞬きする。
良田アリス
沙梛百合籠
沙梛百合籠
良田アリス
良田アリス
「……あ…百合籠ちゃんにとって、みろくちゃんってパパみたいな人
なんだね…?…ごめんね……悪く言っちゃった…」
「……ええ、そうね。彼女は私にとっては家族か……それ以上に大切な人。
私は彼女との約束を果たす為に、コロシアイに対しての静観を選んだの」
「私を外道と罵るのは自由だけど…
…あの子にそれが向くのはとても耐えられないわ。」
「そっか……………自分の守りたいもののため…大事なもののため…かぁ。
うん、アリスには難しいや…」
「でも、アリスにはそういう気持ち、あるよ。
だから、ちょっとだけ理解できるかもしれない」
しばし目を瞑って、ぱっと顔をあげたアリスの目はやはり無垢だ。その目に、百合籠は少しばかり目が眩む。自分もかつて幼い時は、こうだったのだろうか、と。
本当に子供だった、小学生級と呼ばれたあのまばゆい時代。まだ色鮮やかで美しかった世界を愛せた、あの頃が遥か彼方に感じた。
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それはある日の朝。
芍薬ベラ
「うー…」
エメラルドグリーンに真っ白なアイスが浮かび、可愛らしいサクランボがワンポイント。そんなクリームソーダは美味しいのに、ストローを咥えるばかりで喉をあまり通らず、グラスの表面から大粒の水滴がぽたりと落ちた。
アヴェル
アヴェル
芍薬ベラ
「なんだか元気ないわね。…やっぱり、あの手紙のことが気になるの?」
「そーなの…落とし主が見つかったから、コロシアイはもうしなくていいの。
でも、秘密を知られてるって…なんか、やーなの…」
「そうよねぇ…」
隣に座るアヴェルが持つグラスの中も、対して減っておらず大きくカットされた氷は半分ほどの大きさになっていた。
アヴェル
芍薬ベラ
「コロシアイをしなくていいと言われても、島からは出してもらえないん
だもの。やになっちゃうわ」
「あんまり人を疑いたくないの…でも、でもー…
1人でいると、やなことばっかり考えちゃうの…」
いつもは満開の花のような笑顔のベラの顔はすっかり萎れ、どろりと溶けて辛うじて残っているアイスをもそもそと食べる。どうにかしたくてもどうにもできない、もどかしさが逃げ場を失って体の中で暴れているようだ。
アヴェル
アヴェル
芍薬ベラ
「ん~…なら、いっそ1人でいないようにする、とか…?」
「誰かとずっと一緒にいるの…?」
「2人きりってのも安心しないし…いっそ、皆で集まって寝泊まりするって
いうのは、どうかしら?」
芍薬ベラ
「…お泊り会、なの??」
俯き気味の顔を少しあげたベラに、アヴェルはウインクしながら例の秘密の手紙を取り出す。
アヴェル
アヴェル
芍薬ベラ
アヴェル
「こんな野蛮な手紙なんかじゃなくて、もっとステキな手紙で皆を
誘ってみない?お菓子やご飯を楽しんで、駄弁ってだらだら遊んで、
夜更かししちゃったっていいじゃない」
「で、でも…こんな時にいいの…?」
「こんな時だからこそよ。娯楽はただの浪費じゃないわ。もっと純粋な悦びや
楽しみを感じるためのもの。悪も善もないの。ただ楽しみましょう、ね?」
「それに、人が集まっている中なら個人の動きも制限されて、
悪い事なんてしにくいでしょ?」
芍薬ベラ
「…うん…!やってみたいの!」
かくして、クラブレインドッグにて【お泊り会】が決まり、近くにいた何人かに声をかけ準備を進めることとなった。
現状を考えて、全員が参加することはないだろう。しかしこの一晩が少しでも憂いを晴らしてくれるなら…そう思いながら、姫宮蝶子も手伝うべくショップに足を運んでいた。
君野大翔
姫宮蝶子
大鳥外神
「食事、お菓子、飲み物…色々買うものはありますね」
「私は参加はできないけど、用意の手伝いくらいならできるかな…。
さすがに運びきれないですし、台車を借りましょうか」
「飲み物とお菓子は特に多くしておこうかな。
こういうラフなお泊り会なんて、子供の時ぶりだよ」
買い物かごにどっさりと商品を乗せて歩き、お菓子の棚に手を伸ばす。島の中を補うためのショップはあまり大きくなく、お菓子の棚もあっという間に空っぽになってしまう。
大鳥外神
モノボウズ
姫宮蝶子
君野大翔
「ああ、モノボウズ…お菓子の在庫はあるかな?」
「申し訳ありませんが、今棚に出ている分で全てなんです。
今夜はお泊り会をなさるとお聞きしたので、現在補充分を作成して
おります。夜には出来上がりますので、ご容赦ください」
「お菓子は傷むのが早いし、あまり作り置きが出来ませんからね…
仕方ありません」
「足りなくなったら、夜に買い足しに来ようか。
あとはジュースを…あれ、なんだかぬるいね…?」
ジュースの冷蔵ショーケースをよく見ると「故障中」と張り紙がしてある。確かに手をかざしても冷気は流れてこず、どの飲み物も常温だった。
モノボウズ
君野大翔
姫宮蝶子
大鳥外神
「そちらのショーケース、冷蔵機能が少々故障中でして…
ドライアイスも切らしておりまして」
「管理が行き届いていないのではないですか?
人にコロシアイなんて馬鹿げたことをさせておいて、生活面が疎かに
なるなんていかがなものだと思いますよ」
「まぁまぁ…あんまりきついことを言うのは、やめておきましょう…?」
「アンプル探し中のモノボウズをあちこちで見るから、
人手が足りないんだろうね」
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工房
日差しが真上から容赦なく突き刺さる、昼下がり。
島中の物品の作成を行う工房から、もくもくと煙があがっている。
カロンという涼やかなカラスの音とセミの鳴き声を浴び、夏の日差しも心地よく感じる…なんてことはない。
江見菜みいな
「あ、暑いぃ…重いぃ…」
額に汗を浮かべた江見菜みいなは、いつもと違い武骨なつなぎ服を着ていた。長い髪をまとめあげ、身に纏う作業着はどこか着慣れている様子だ。
秘密の暴露によって気落ちした表情は、いまだ影を落とし溜息をついている。台車の取っ手に頬杖をつき、いくつか積み重ねた大きな段ボールを見下ろした。
大賭清一
「ほんとすごい日差しだねぇ、これぞ夏って感じ♪
はい、こっちの段ボールは俺が持つから」
台車からいくつか段ボールを取り、軽々と持ち上げた大賭清一もまた同じ作業着だった。こちらは着慣れたというよりも、最早自然体そのもの、工事現場のくたびれたおっさんである。
物造白兎
「あ、工房の作業着なのです!何か作ってたのです?」
工房に立ち寄る面子はそこそこ多く、物造白兎もその1人だった。何かを作る才能が多いこともあるだろうが、己の作業に没頭したいというのもあるだろう。
この島に来る前は、己の才能を求められふるう日々だった。自分の才能に関係あることをしている時が落ち着く、という人も多い。
江見菜みいな
大賭清一
物造白兎
「えっとね…ガラス細工だよ。かまど使うやつだったから、いつもの服だと
危ないからね」
「俺はただのお手伝い~ネットが繋がってないから、ほんとやることなくて
暇で暇で…ほっといたら砂浜で1人酒盛りずっとしてそうだからさぁ」
「ダメな大人の典型例ってやつです…!」
大賭清一
「白兎ちゃんはこんな大人になっちゃだめだよ~??
ま、今はちゃんと働いてるけどね。ほら、綺麗だし見てみなよ」
大賭は自分の持っていた段ボールを1つ開け、屈んで白兎の目線に持っていく。中には色とりどりのグラスが並び、きっちりとそろったなめらかな縁に、細やかな装飾が太陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。
物造白兎
江見菜みいな
「わぁ…!すっげぇ綺麗なのです!おまえが作ったです?」
「そうだよ、ヴェネツィアン・グラスっていうんだ。
今晩のお泊り会に持って行こうと思ったの」
物造白兎
「ああ、さっき招待状がポストに入っていたのです」
物造白兎
大賭清一
物造白兎
大賭清一
「くっそ見にくいデザインセンス皆無の招待状だったのです。
作った奴のセンス終わってやがるです。哀れみすら感じるのです」
「わーるかったね、センス終わってて」
「あれ作ったのお前なのです!?…今度センスについて、教えてやるです」
「そりゃどーも」
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暑さが収まっていく宵の口。
茜色の日差しが消えはじめ、うっすらと明るくなってきたころ、アヴェルとベラはレインドッグに向かい始める。
見慣れたコテージの軒並みの中、4軒は朝から晩まで明かりが灯ることも、誰かが出入りすることもない。
それがセミの鳴き声と相まって物悲しく感じてしまう。
ふと、百合籠がコテージの前でプランターの手入れをしているのが見えた。よくよく見ると、玄関先に土いじりの道具が並び、家の横には大きな段ボールが置かれている。結構本格的なガーデニングのようだ。
沙梛百合籠
アヴェル
芍薬ベラ
「Hey,これからレインドッグに行くけど、一緒に行かない?」
「…お誘いありがとう。でも人と約束があるから…」
「そーなの?お約束が終わったら、後から来てくれたら嬉しいの!」
百合籠はベラの声に返事はせず、曖昧にほほ笑みで返す。あの騒動が起きた後で、気軽に参加というのは難しいかもしれない。
けれど、これまで共に過ごした百合籠が悪人だと完全に決めつけるのも難しいことだ。
百合籠に見送られ、2人はレインドッグまで足を運んだ。
すでに準備を終えた机やイスの上には、様々な料理や飲み物が並んでいた。いくつかの部屋に布団を布いて雑魚寝の準備をすれば、あとは飲んで食べて遊ぶだけの時間だ。
姫宮蝶子
江見菜みいな
アヴェル
螺河鳴姫
「堅苦しい挨拶は抜きにして、皆で楽しみましょう!」
「はぁ…羽目を外しすぎないように!」
「こういうの、ちょっと新鮮かも…」
「みんなは何をするつもりなんだい?ボードゲーム?」
芍薬ベラ
アヴェル
芍薬ベラ
「やっぱり皆でわいわいする方が楽しいの!…っあ」
「Ouch!ジュースが零れちゃったわね…服がべとべと…
ここ、シャワーはさすがにないわよね」
「ご、ごめんなさいなの…!温泉に行って洗ってくるの!」
螺河鳴姫
物造白兎
「まったく、落ち着きがない連中なのです。せっかく綺麗なグラスに
注いでるんだから、おしとやかにじょーひんに飲むのです」
「はは、飲んでいるのはジュースだけどね。ん~…っちょっと火照ってきたし、
夜風でも浴びてこようかな」
姫宮蝶子
江見菜みいな
大賭清一
「あ、飲み物とお菓子がちょっと足りそうにないですね…」
「それじゃ、あたしショップまで買ってくるよ!」
「ジュースとか1人じゃ大変でしょ。もう外も暗いし、一緒に行こっか♪」
穏やかで華やかな、久しぶりに活気のある時間が過ぎていく…。
宴が終わり、皆が寝静まる夜。
もうコロシアイはしなくていい。誰も死ななくていい。そんな安堵が夢の世界へと手招きする。
静かな波の音が島を包み込み、星が落ちてきそうなほどにちりばめられた夜空が優しく見下ろしていた…。
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新たな一日を迎える、次の朝がやって来た。
昨晩の余韻を残しつつ、各自欠伸をしながらコテージに戻る。朝食の時間が過ぎ、朝の支度が終わる頃、良田アリスはコテージの前に立っていた。
物造白兎
物造白兎
姫宮蝶子
良田アリス
姫宮蝶子
「良田さん、どうされたのですか?そこは…沙梛さんのコテージですね」
「そういや、昨日のお泊り会に結局来なかったのです」
「うん、お部屋の電気がついてないから、百合籠ちゃんまだ寝てるのかなって…
もう10時なのに」
「夜更かしでもしてたんじゃねぇですか?」
「生活習慣の乱れは心の乱れ。ここは一つ、声をかけて起こしましょうか。
…寝起きが悪いタイプでないといいのですが」
ノック、ノック、チャイム。返事はない。
物造白兎
良田アリス
姫宮蝶子
「やっぱり寝てるのです?」
「…あれ、玄関が少し開いていますね…鍵をかけ忘れたのでしょうか?
不注意ですね」
「百合籠ちゃーん、鍵閉め忘れてるよー!」
姫宮蝶子
「こら、勝手に開けない!」
蝶子の制止を適当に流し、アリスは玄関を少し開く。
すると、入口に散らばった靴の数々が目に入った。
良田アリス
「わっ、靴がすごい散らかってる…!」
物造白兎
「片づけ下手ってレベルを超えてるですよ…?
てか、玄関だけじゃないのです…」
顔を上げると、床に敷かれたマットや棚に置かれた花瓶、通路に至る飾りまであちらこちらに散らばり、まるでここだけ地震でも起きたような散らかり具合だ。
姫宮蝶子
「何事ですか…!?沙梛さん、入りますよ…っ!」
いつもなら礼儀正しく靴を脱ぐところだが、この状況を見てそんな悠長なことは言っていられない。
脱いだ靴をそのままに部屋への扉を開き、最初の一歩を踏み出す前に足が止まった。
一瞬、それは壁にもたれかかっているのだと思った。しかしそれは、もたれるにしては不自然な形で体が固定されている。
おびただしく流れる血の中央に見える黒い点は釘だ。彼女の愛した蝶の標本のように
百合籠の白い体が無惨にも壁に打ち付けられていた。
その口には布が噛ませられ、声を出せぬままにどれほど苦しんだのだろう。すっかり血の毛を失った体は、もう痛みを感じることがない。
物造白兎
「ひっ……!」
蝶子の後ろから覗き込んだ白兎が悲鳴を漏らす。それは、百合籠の死体を見たからだけではない。
白いシャツを染め上げ、俯く顔に甘さも輝きもなく、ただの肉に成り果てた彼がそこにいた。
死体役と言われればどれだけ救われただろう。しかしこの部屋に、命は1つもなかった。
飛び散った血液、荒れ果てた家具たち。ここで何が起こったのか、自分たちが何を見ているのか。思考がまとまらない。
『死体が発見されました。場所は沙梛百合籠のコテージ。ただいまより捜査時間となります。捜査後に裁判を行いますので、皆さまの奮闘を期待しております』
二度と聞くことはないと思っていたアナウンスが鳴り響く。いつのまにかアリスが外に出て、モノボウズを呼びに行っていたようだ。
アナウンスを聞いて駆けつけた者は、凄惨な部屋を前に立ちすくむ。
栂木椎名
「また事件!?そんなに秘密をバラされるのが嫌だったのか!」
「なぁ、死体が出たって……、……は?」
大鳥外神
「ど、どうしたんですか………? ふ、二人も……?」
モノボウズ
「…まさか、落とし主が見つかってなお、2人も亡くなるとは…。
後はアンプルを見つけてしまえば、平和に暮らせるのに…何故…」
モノボウズ
「…事件が起きた以上、皆様の中に人殺しがいるのも事実。
突き止めましょう、排除しましょう、島の安全のために、平和のために。
私達の楽園に汚れた部分は不要なのです」
江見菜みいな
「……(青い顔で遠目から見てる)」
螺河鳴姫
「ひどく血の匂いがして吐きそうだ…。」
栂木椎名
「しかも、2人もだなんて……洒落にならないよ……やりすぎ。
やりすぎだろ、こんなのはさ……」
良田アリス
「うーん…みろくちゃん、についてもっと詳しく聞きたかったのになぁ」
大鳥外神
物造白兎
栂木椎名
「最悪だ…」
「...もういやだ..かえるです...」
「捜査したらいいんだろう?全く、二度あることは三度ある、だなんて
言うけれど、こんなにはやく起こるなんてね……」