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chapter1-毒食わば骨舐れ-

chapter1-毒食わば骨舐れ-裁判編 前編

毒桃京知の死から始まった調査を終え、一同は体育館へ集められていた。
今までそこにいた人が一人いない事実に、何とも言えない歯がゆさを覚える。

 

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​モノエル

「さて…皆しゃま集まって頂けたようでしゅね」

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​モノエル

「悲しいことに、参加者の一人である毒桃しゃまが亡くなられまちた。

 それも、誰かに殺されて…うう、毒桃しゃまはまだ高校生。

 未来ある女の子だったのに、あんまりでしゅ…」

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​モノエル

「今日はその裁判のために集まってもらったのでしゅが、裁判には裁判のための

 舞台が必要でしゅよね。なのでこれから皆しゃまを、【裁判場】へと

 ご案内するでしゅ」

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天城飴梨

「………淡々と、言いやがって」

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琴ノ緒閑寂

「地下ァ……?」

モノエルが丸い手をぽふりを叩くと、床が軋む音と同時に足裏に振動が伝わってくる。
一歩あとずさっている間に、拾い床はぽっかりと口をあけ円筒状の物体がせりあがってきた。

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カレブ

「これは凄いカラクリだな」

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​黒羽麗

「こんなのあったんだ……気づかんかったわ……」

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面屋敷浪漫

「一体この施設の構造はどうなっているんでしょう…」

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​モノエル

「さ、このエレベーターにのって地下へ向かうでしゅ」

さらりと言ってのけるが、体育館の真ん中にそびえる物体の異物感に足が進まない。
ちびエルに背中をぽんと押されてようやく歩きはじめ、全員が乗り込むと扉が閉まり下降を始める。

僅かな揺れと軋む音、下に向かうたびに足裏からせり上がる不快感はなんなのか。
地下1階程度の距離だろうに、随分長く揺られた気がする。

ようやく振動が納まり、安定した地面に足を付けられた先には円形の座席が用意されていた。
裁判で見る証言台を円に並べたような、不可思議なそこが裁判場だとモノエルは言う。
23ある座席のうち、1つには毒桃の遺影が飾られていた。
仰々しい証言台の前へ立つと、モノエルが木槌をかんと鳴らした。

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茶渡利三沙

「遺影なんてまた、悪趣味なものを置くねえ」

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遠雷紬

「…(息をのんでいる)」

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​モノエル

「うら若き才能を摘み取った犯人を見つけるべく、こうして裁判を

 開くわけでしゅが…」

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​モノエル

「しかし我々、こうも考えるのでしゅ。ここにいる全員を欺いて

 犯人であることを隠し通せる人は、十二分に才能があるのではないか、と」

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​モノエル

「逆に人数が限られた場所で殺人犯も見抜けない人は、この先社会に出ても

 どこで何やっても、ダメダメな人生しか送れないんだろうなぁ、と」

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​描成絵智

「……才能」

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比与森閑古

「ダメダメな人生、かぁ……」

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​モノエル

「だからエル、裁判にルールを付けることにしまちた」

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​モノエル

「殺人犯…クロは全員を欺きバレ無かった時、未来と才能あふれる人として

 世へ送り出し前面的に今後もずっとサポートをしましゅ!

 もう二度と才能がないなんて言わせない、素敵な人生を約束するでしゅ!」

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​モノエル

「クロだとバレた時は、シンプルに殺人犯ということでオシオキさせて

 いただきましゅ。ゴミでクズでカスな人殺し野郎に救いはないのでしゅよ」

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​モノエル

「そして残りの皆しゃまは、クロを探し出せなければ、同様に生きている価値が

 ないと見なしてオシオキさせていただきましゅ!だって今後の人生で人殺しを

 見逃す人なんて、世に戻せましぇんから」

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​黒羽麗

「……ハァ!?殺人犯外に出すの!?」

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緑紅茶

「なんて勝手な…」

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面屋敷浪漫

「ボソ(その場合人殺しを見逃すのはモノエルさんも同じ…)」

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エリアス

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茶渡利三沙

「何故そのようなことに…」

「その言い草だと、オシオキっていうのもただのお小言では済まなそうだ」

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​描成絵智

「価値が、ない……(右腕を抑えながら)」

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​モノエル

「文句は一切聞きましぇん。ここはカスタード協会で、エルはその会長。

 エルが一番偉くって、エルがここのルールなのでしゅ。

 皆しゃん、守ってくだしゃいね」

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夜見塚灰慈

「納得行かなくてもせざるを得ないんだろう」

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滑川ぐみ

「……今までカスタード協会で才能を復活させた奴らって、まさか……」

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花柳玲子

「……ま、この妙に手慣れた様子からして織り込み済みなんでしょうね」

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​黒羽麗

「マジありえん……意味わからん……」

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糸色恋花

「…………なに、なんなの……、やだ…………

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​モノエル

「事件の事でしゅけど…まずは一番証言できそうな人に聞いてみましゅ?」

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​描成絵智

 「えっと…夕食後の食堂…毒桃さんのスケッチをしてたんです。

 絵のモデルをお願いしてて…。そしたら急に部屋が暗くなって

 それで…誰かに襲われて、僕、気絶して…。目が覚めた時には

 もう朝でした…。ど、毒桃さんは…もう死んで、ました…」

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【描成の証言】

「えっと…夕食の食堂…毒桃さんのスケッチをしてたんです。絵のモデルをお願いしてて…。そしたら急に部屋が暗くなって、それで…誰かに襲われて、僕、気絶して…。目が覚めた時にはもう朝でした…。ど、毒桃さんは…もう死んで、ました…」

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​モノエル

「2人も襲われるなんて、怖いでしゅ…描成しゃまだけでも

 助かってよかったでしゅ!」

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​モノエル

「可愛そうな毒桃しゃま…ぼろぼろで血だらけでちたね。

 なんでこんなに傷だらけだったんでしゅかね?」

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エリアス

「…包丁が落ちておりました」 

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天城飴梨

柄がハンパに指っぽく錆びてたけど…最悪だよ」

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遠雷紬

「……(包丁の修繕中、って張り紙を見つけた)」

素手で持つと錆びてしまう、と書かれていたね」

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踊瀬舞円華

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【包丁】

現場に落ちていた血の付いた銀製包丁。柄の部分が手の形で錆びついているが、
半端に指の跡しか付いていない。

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【修繕中の張り紙】

流し台に張り紙がしてある。『現在銀製包丁の修繕中です。
​ コーティングが剥がれているため、素手で持つと錆びてしまうので注意!』

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花柳玲子

「…まあ、状況から見てこれが犯人の手形…なんでしょうけれど。

 ……どうして“指の跡”だけなのかしらねぇ」

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茶渡利三沙

「指の跡だけというのは、少々不自然に感じるねえ」

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心条裁己

「それでしたら、専門職向けのカタログに何か書いてありましたね」 

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【専門職向けカタログ】

作家業向けのページに折り目が付いている。
『手の汚れをばっちりカバー!洗濯機使用OK、サイズ調整可能、
​ フリーサイズ指だし手袋』

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糸色恋花

「…………あの」

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花柳玲子

「…なぁに、糸色ちゃん?」

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比与森閑古

「どうかしたの?」

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糸色恋花

指の跡…しか残ってないって、逆に言えば……。

 …………指以外の部分は隠れてたってことに、なるかしら。

 例えば…その、ぅー……ゆび、……【指出し手袋】とか。

 描成さん、も……つけてるわよね?」

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糸色恋花

「……それで、……ま、間違ってたら……ごめんなさい。

 描成さんが嘘をついてたら、毒桃さんを包丁で襲って……

 ころ、した後……に、自分を傷つけて、乱暴されたみたいに

 【自作自演】した……とか…………」

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​描成絵智

「は…?僕が自分で、自分の腕を、折ったって、言いたいんですか…?」

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緑紅茶

「…1人だけ生きてるってのも不自然だし、

 気絶なんてフリでできるだろうしな」

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​黒羽麗

「推理的にはアリ寄りのアリ……かも?」

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カレブ

「もしそうだとしたら。恐ろしいな。」

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花柳玲子

「……。…被害者とずっと一緒にいた、って意味では描成さんに

 犯行は可能だったでしょうねぇ。 ……けど、…ああ、ごめんね。

 考えを否定するわけじゃあないんだけれど…

 ただ、絵を描く腕を怪我するような自作自演をするかしらぁ?」

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メアリー

「……レンゲさんの意見もわからなくは無いんですけど、ねぇ……」

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夜見塚灰慈

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​黒羽麗

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エリアス

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​描成絵智

「利き腕を強くぶつけて、複雑骨折なんてどんな倒れ方を

 したのだろうと思うよ」

「完全にありえんくはなくない?うるだったらやらんけど……」

「…えぇ、それくらいの覚悟を持っていたとすれば……

 可能性としてゼロではないでしょう」

「自作自演するなら、もっとましなことしますよ…。

 わ、わざわざ・・・自分でこんな、絵が描けなくなるようなこと、

 するわけないじゃないですか…っ」

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フェイ

「君は自ら腕を折るような事はしない …大丈夫…私はそう信じているよ」

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琴ノ緒閑寂

「……まあ、自作自演ならもっと楽な部分を傷つける気もするが…

 背後からの傷なんて、そう簡単に自分でつけられるもんじゃねえだろ。

 ましてやエガキナみたいな細っこい奴じゃ尚更よ」

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【描成の傷】

背後から殴打された痕跡が残っている。その時に利き腕を強くぶつけた様で、
複雑骨折をしておりしばらく何も持てそうにない。

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糸色恋花

「…………ご、ごめ なさ……」

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夜見塚灰慈

「発言に責任があるなら続けて、どうぞ。」

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花柳玲子

「そう威圧しちゃだめよぉ、夜見塚さん。可能性を考えることは必要よ」

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茶渡利三沙

「玲子の言う通り。可能性をあげては潰していくのが話し合いの道筋だ。

 一つずつ考えていくのがいいだろう」

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糸色恋花

「それでも……その、私が言ったことですから」

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心条裁己

「可能性のひとつを指摘してくれただけでしょう?

 大丈夫ですよ、少しずつ話を進めていけば、真実は見えてくるはずです」

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​黒羽麗

「そうそう、なにごともケンショーだよケンショー」

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花柳玲子

「描成さんの自傷ではない。

 …とすると……あれは誰につけられた傷かしらぁ?」

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​モノエル

「毒桃しゃまが【抵抗してついた傷】では?いくら女の子といっても、

 こんなひょろっとした男に一方的に殺されたと思えないでち。

 きっと必死の抵抗の末に…うう…」

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​モノエル

「包丁で刺したうえに殴るなんて、どんなバイオレンスでしゅか!」

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花柳玲子

「たしかに、死に物狂いで思いきり抵抗すれば骨折させるくらいは

 可能だったかもしれないけれど……

 今回においては、それはあり得ないと思うわよぉ」

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比与森閑古

包丁で刺したときに抵抗されて怪我をしたら、毒桃さんを殴打することは

 できないんじゃないかな。

 先に毒桃さんを殴打したなら、その時毒桃さんは……その、即死したから

 抵抗ができないと思うんだ。だから、描成くんの傷は【第3者】から

 負わされたもので間違いないはずだよ」

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【毒桃の遺体】

身体中に刺し傷があり、頭部は殴打され歪にへこんでいる。また、舌が切り取られ、
足の一部も抉り取られている。致命傷になったのは頭部陥没で即死…
​とモノエルファイルに書いてある。

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​黒羽麗

「「こんなん死んでから気合いで反撃したって事になっちゃうじゃんね。

 桃ぴがゾンビだったら反撃とかできるかもだけど」

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エリアス

「…明確な殺意を感じますね」 

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カレブ

「酷い有様だ。」

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緑紅茶

「包丁がわざとらしく落ちていたのも、真犯人が描成に罪を被せようと

 したんだろうな」

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茶渡利三沙

「偽装工作、とかいうやつかい?」

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​モノエル

「犯行時刻は夜。誰でも2人を襲うことは可能でしゅ。

 何か他に手がかりはないでしゅかね…」

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滑川ぐみ

「そういえば、絵筆が折れていて……白っぽい毛が落ちてたな」

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【散らばった絵筆】

毒桃の血で汚れた絵筆が折れて床に落ちている。
絵筆の筆先だろうか、血で汚れた白っぽい毛があたりに散らばっている。

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​モノエル

「これってもしかして、犯人の髪の毛でちかね?

 白…っぽい色?血で汚れてわかりにくいでちね…」

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花柳玲子

「白っぽい毛といえば…【カンタービレ】さん、【滑川】ちゃん、

飴梨】、【カレブ】さん…かしらね」

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メアリー

「あら……絵筆の毛、じゃないんですかぁ?」

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​黒羽麗

「絵筆の毛と髪の毛の違いなんて分かんなくない?」

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糸色恋花

「……絵筆と勘違いする長さなんて……」

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茶渡利三沙

「ぱっと見では判断がつかないな」

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遠雷紬

「……っ……ッ…」

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​モノエル

「そういえば、現場に落ちてた包丁ってどこから持ってきた

 ものなんでしゅかね?」

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夜見塚灰慈

修繕台の上には包丁が置いてあったはずだ。それを持っていったから、

 何も置いて無かったんだろうな。」 

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【修繕台】

包丁修繕中と書いてあるが、修繕台には何も置いてない。

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​モノエル

凶器は厨房のものでしゅか…。あ、あの包丁はきちんと処分して厨房も食堂も

 殺菌消毒しまちたので、明日から安心してご飯を食べてくだしゃいね!」

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メアリー

遠雷紬3.png

遠雷紬

カレブ.png

カレブ

茶渡利三沙.png

茶渡利三沙

黒羽麗2.png

​黒羽麗

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糸色恋花

「そういう問題ですかぁ…?」

「…(手で口をおさえる)」

「おお良かった。それなら安心だな。」

「あ、カレブ…君は気にしない性質かい」

「……しばらく食欲なくなりそ〜……」

「食べたくないわよ……。……明日…」

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​モノエル

「厨房といえば、何か他にありまちたかね?」

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比与森閑古

「誰のかなって思ってたんだけど……作業台の下にピアスが落ちていたよ」

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茶渡利三沙

簡単に拾えそうなものだし、関係ないかと思ったけど…

 重要な証拠だったりしてな?」 

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【作業台の下のピアス】

誰かのピアスが落ちている。
作業台は網目で見えやすく、しゃがんで少し腕を伸ばせば簡単に拾えそうだ。

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メアリー

「Hmm…ピアス、落ちてましたよねぇ。さっき上がった4人の中で

 ピアスをつけていて、なおかつ2人を襲えるような人物と言えば…

 【カレブ】さんしかいないんじゃないですかぁ?」

chapter1-毒食わば骨舐れ-

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