Chapter3
Chapter3―少年少女だった日の思い出―
裁判編(2)
物造白兎
物造白兎
「あのー…ちぃとばかし気になるところがあるんですけど…」
「大翔が百合籠のコテージに行って、殺された…
だったら大翔の靴はどこにいったです?
玄関には百合籠の靴しかなかったし死体は裸足だったのです」
☂ コテージの玄関
沙梛のコテージの玄関。靴箱の棚が開けられているが、物があまり入っていなかったようで、室内に比べて荒らされていない。靴置き場には百合籠の靴が乱雑に散らばっている。
姫宮蝶子
「靴と言えば…工房で男物の靴を見ましたよ。
靴だけ忘れてるなんて変だとは思いましたが…
もしかして、それが君野さんの靴なのでは?」
☂工房の玄関
工房の中は土足厳禁のため、靴を脱ぐことになっている。玄関に男物の靴が1人分置いてある。
江見菜みいな
姫宮蝶子
「工房で靴を脱いで、その後裸足で歩いていったんじゃないかな?
靴がやぶけちゃったとか」
「足裏は汚れていませんでしたし、工房からコテージまで裸足で歩くのは
相当きついと思いますが…」
芍薬ベラ
「コテージの中に無かったもの…なら、らーちゃんも気になることがあるの!
芍薬ベラ
「お泊り会が始まる前に見たんだけどねー。
沙梛ちゃんのコテージの横に段ボールが置いてあったの!
捜査が始まった時にはなかったけど、沙梛ちゃんが片づけたなの?」
大鳥外神
「それってコテージの中に転がっていた段ボールでしょうか…?
かなり大きくて、シンプルな沙梛さんの部屋にあるのはちょっと
違和感があったんですが…」
☂段ボール
沙梛のコテージの中に転がっていた段ボール。大型の家電も入りそうなほど大きく、中は血が擦れたような痕がある。
螺河鳴姫
「段ボールの中に血の痕があるってことは、そこに血のついた何かが
入ってたってことだよね」
大鳥外神
「…もしかして………」
大鳥外神
「その段ボールの中に入っていたのは君野さん自身だったのでは
ないですか?君野さんの死体の細かい擦り傷は、段ボールの中で
揺れてこすれた痕ではないでしょうか」
大鳥外神
「君野さんは、靴を脱いで移動したのではなく、工房で靴を脱いだ後に
箱に入れられて運ばれた…だから靴を履いてなかったのではないでしょうか」
大鳥外神
「つまり…君野さんの本当の殺害現場は工房です。
だから現場には凶器の刃物が残っていなかったのでしょう。
そもそもコテージで殺したのではないのですから」
螺河鳴姫
姫宮蝶子
螺河鳴姫
「お泊り会の前から段ボールがあって、大翔ちゃんがその中にいたと
したら…大翔ちゃんは百合籠ちゃんより先に殺されて、百合籠ちゃんを
殺した後に犯人がコテージの中に持ち込んだってこと…だよね」
「しかし、なぜわざわざそんなことを…?」
「工房って結構人の出入りが多かったみたいだから、ひとまず死体を隠して、
犯行を隠そうとしたんじゃないかな?」
おとり『めんどくせ〜殺し方してんなぁ』
才羅『台車なんかを使うとしても、桜春以外の女じゃ厳しいだろうな』
らぶり『それに君野さんを運べる人じたい、限られてきますよね……。
それこそ君野さんと同じ男性でないと……。』
大賭清一
「んー…でも結局、それが出来るのってお泊り会の後にアリバイが無い
椎名君だけだよね。お泊り会の前まで段ボールは外にあって、
沙梛ちゃんは生きてたんだからさ」
栂木椎名
「だから違うって…!ぼくがお泊り会より前に、工房で君野君を殺して、
段ボールに詰めて運んで、コテージの中に死体を置いて、沙梛ちゃんを
殺して…出来ると思う?見ての通り体力仕事は得意じゃないんでね」
栂木椎名
「それに、ぼくは工房に行った事がないよ。行く用事がないからね。
嘘だと思うなら、【工房の来館記録を見てみればいいさ!」
☂工房の来館記録
工房は来館者を自動的に記録している。お泊り会当日の記録が残っている。
「物造白兎」「江見菜みいな」「芍薬ベラ」「大賭清一」「螺河鳴姫」「君野大翔」「良田アリス」
大鳥外神
「その段ボールの中に入っていたのは君野さん自身だったのでは
ないですか?君野さんの死体の細かい擦り傷は、段ボールの中で
揺れてこすれた痕ではないでしょうか」
大鳥外神
「確かに記録に載ってない…これなら、椎名さんが君野さんを工房で殺すのは
不可能ということになります」
江見菜みいな
「でも、君野君が入った段ボールを、百合籠ちゃんのコテージに持ち込めた
のは、椎名君だけ…なんだよね…?」
アヴェル
「なら…大翔を工房で殺した人と百合籠をコテージで殺した人って
別々なんじゃないの?つまり、共犯者がいたってワケよ
芍薬ベラ
「共犯者…って、犯人が一人じゃないなら、その場合どーすればいいの?」
モノボウズ
「質問されたのであれば、お答えいたしましょう。何人と事件を起こそうと、
クロと判断されるのは殺人をした人のみです。同時に二つの事件が
起きたならどちらのクロも探し当ててください」
モノボウズ
「片方だけ当たった場合、当てられた方はオシオキ。
外された方は、本島へお帰りいただきましょう」
姫宮蝶子
栂木椎名
「共犯のメリットもある…ということですか」
「コテージが現場だと思ってそっちしか見てなかったけど、君野君の
殺害現場は工房だったんだろ?何か気になることはないのかい?
ぼくは行ったことないから分からないけど」
物造白兎
「そういえば、工房は色んな機械や道具があるですけど…
事件のあった日、昼間に焼却炉で何かを燃やしていたみてぇです。
普段は夜に燃やすって聞いたですけど…」
☂工房の焼却炉
可燃物は夜にまとめて焼却処分をしている。事件当日は、昼間に稼働した形跡がある。中身は全て燃え、何が燃やされたかは分からない。
大鳥外神
「君野さんは胸を刺されて殺された。なら返り血も相当浴びたはずです。
だから服を処分したのではないですか?持って帰るより、確実に証拠を
消せますから」
大賭清一
「服は処分できても、部屋の血の掃除は大変そうだし、裸で出ていくわけ
にもいかないでしょ。わざわざ工房に着替えを持って行って殺して…
なんて面倒なことしたの?」
姫宮蝶子
「いいえ、工房の室内は水洗いできるようになっていますから、
すぐに殺害現場も掃除できたのでしょう」
姫宮蝶子
「それに作業着やシャワールームもあります、服を処分した後は
作業着を着れば問題ありません」
☂工房の清潔管理
工房は汚れやすいため、全ての部屋の床や家具の材質が水洗いできるようになっており、水場も備わっている。また、作業者のためのシャワールームや作業着も設置してある。
物造白兎
「工房の作業着と言えば…事件のあった日にみいなが作業着で段ボールを
運んでいたのを見たのです」
物造白兎
「結構大きな段ボールを台車で運んでいたし…もしかして、その時の
段ボールに大翔の死体が入っていたんじゃねぇですか?」
物造白兎
「作業着だったのも、さっきのがしんが言ったとーり、返り血のついた
服を処分して着替えやがったんです!」
螺河鳴姫
「そんなに、堂々と?!」
江見菜みいな
「そ、そんな…言いがかりだよ!あ、あたしがネットに晒されるような
ヤバい女だって思ってるから、そう見えるんでしょ!ひどいよっ…」
江見菜みいな
「あたしは元々工芸部だよ?工房だって行くし、ガラス工芸の作業中は
作業着くらい着るのは当然だよ。かまどを使うから汗をかいてシャワー
だって浴びるし…」
栂木椎名
「だったら、作業が終わった後もなんでそのままの恰好で出てきたの?
シャワーを浴びたなら、元の服に着替えればいいのに」
江見菜みいな
栂木椎名
「作業中に元々の服は汚しちゃって、着れなくなったから…だから工房で
処分してもらったの。知らないかもしれないけど、ガラス工芸って
ガラスの破片とかでかなり汚れるんだよ。ほら、全然おかしなこと
なんてないでしょ!?」
「いや、この状況でぴったり当てはまるなんて、だいぶ怪しいけど…」
大賭清一
「ちょっといいかな?それってさぁ、絶対無理だと思うけど」
大賭清一
大賭清一
物造白兎
大賭清一
「だって、俺も一緒に御透さんと一緒に段ボールを運んだ時に中身を
確認したけど、ガラスしか入ってなかったよ。物造ちゃんにも
見てもらったし、透明なガラスじゃ下に隠すこともできないよねぇ」
「白兎ちゃんも見たよね、ガラスのコップ」
「えっ?あ、はい…段ボールにいっぱいにキラキラしたガラスのコップが
あって、すごく綺麗だったのです…べねちあんぐらす?とかいう…」
「それにさぁ…白兎ちゃんが御透さん見た時、俺も一緒にいたでしょ?
だめだよ、そこもちゃんと言ってあげなきゃ。
印象操作は関心しないなぁ」
物造白兎
「た、確かにおめぇもいたけど…言いそびれただけで、
うさぎ、印象操作なんてつもりじゃ…」
大賭清一
「ま、どうしても前日の騒ぎのイメージってのは残っちゃうしさ。
色眼鏡で見ちゃうのもしゃーないよね」
大鳥外神
「子供になんて言い方するんですか……」
才羅『(増えるとしたらヤバい女と嫌味な男のどっちがマシだろうなあ)』
おとり『ヒステリックな男も女も嫌だわ。はー、ちょっと図星だからって声荒げる
奴はやだねぇ〜』
才羅『あんたが言うか?それを』