Chapter4
Chapter4―うたかたの記憶―裁判編(2)
芍薬ベラ
栂木椎名
物造白兎
栂木椎名
「アンプル以外にも、あの建物の中にはいろんなものがたーくさんあったの…
それも関係あるの??」
「そういえば、モノボウズに関しての資料なんかもあったね。その資料に
よると、島の管理ロボットは2種類あるって書いてあったんだ」
「モノボウズのリーダーとその他の個体ってことです??
あいつらたくさん嫌がるから、見分けがつかなくて大変です」
「いや、モノボウズとは別に、1個体のみ特別なロボットがいたみたいなんだ」
☂ 管理ロボットの資料
謎の建物にあった資料。雨傘島には2種類の管理ロボットによって、生活が成り立っている。1つは複数の個体にて、島内の安全・施設の運営を担当する。もう1つは1個体のみの生活に寄り添うパートナーを担当する。
栂木椎名
「そうそう、それぞれのロボットに関する詳しい資料も見つかったよ」
アヴェル
「さっきから、さも自分が見つけたように言ってるけど、
探して読み上げたのはアタシなんだけど?」
栂木椎名
「読み上げてもらった方が、頭にすんなり入るもんでね。どうも、助かったよ」
☂ モノボウズ
複数の個体で島の安全・施設の運営を管理する。機能面を重視しているため、感情プログラムが掲載されていない。危険物を察知し、素早く捕獲・除去するための安全保持装置が備わっている。
☂ η(イータ)
1体のみ存在する少女型愛玩ロボット。生活をサポートするため家事機能が豊富に搭載され、感情プログラムにより細やかな愛情表現が可能。飲食可能。防水加工はしてあるが、浸水すると漏電するため注意。機密保持のため、持ち主から離れると強制スリープモードに移行する。
芍薬ベラ
「少女型愛玩ロボット…人間とほぼ変わらない外見…
まさかアリスちゃんはロボットってことなの…?!」
栂木椎名
「今にして思えば、いくら大会やメディアに出ないからと言って、知名度が
全くない小学生級なんておかしいよ。名前さえ知られてないなんて…」
芍薬ベラ
アヴェル
「数字の天才ってゆーのも、ロボットだったら当然…ってことなの?」
「子供にしては妙に落ち着いて裁判に参加してたし…
この前の裁判の時だって、みんなみいなが逃げたことに驚いてる中、
冷静にエレベーターを呼んでたわよね」
栂木椎名
栂木椎名
アヴェル
「ようは、モノボウズの仲間だってことか…
っは、ぼくらはお人形ごっこに付き合わされたわけだ」
「モノボウズは外から、良田さん…ηは内から僕らのことを監視していた…
ってところだろうね」
「だからアンプルのことも最初から知っていたし、危険物を排除するため
白兎の髪を切り落とした…」
大鳥外神
栂木椎名
大鳥外神
大鳥外神
「資料には浸水すると漏電すると…汚れを落とすとき、アリスちゃんには
頭に外傷があった…だから、その時ショートして……」
「ηがロボットなら、話が変わってくる。物造さんはあくまで物を壊した
だけで、殺人なんかしていない。物造さんは犯人なんかじゃないよ」
「けれど…姫宮さんは間違いなく人間です。誰が彼女を殺したのかは、
まだ全くわかっていませんよね…」
「死因も分かりませんし、ドールハウスが現場とも限らない…
事件前に、姫宮さんが何をしてたか知ってる方はいないでしょうか?」
アヴェル
「事件が起こる前、蝶子がアリスを探していたのは見たわ。
白兎にしたことを謝罪させるんだ、って怒ってたみたい」
栂木椎名
「そういえば…アンプルが見つかった後で、ηが「汚れたからお風呂に入る」
って言って、ドールハウスの方に向かったのを見たよ。
なんでコテージじゃなくてあっちに?とは思ったね」
栂木椎名
物造白兎
「モノボウズのグルだったなら、一緒にアンプルを探してたのかもね。
だから人気のないドールハウスにわざわざ言って、お風呂に入ろうと
したんじゃないかな」
「だから蝶子は、アリスを探してドールハウスに行った…ってことですか」
アヴェル
大鳥外神
栂木椎名
アヴェル
「だとしたら…そこで蝶子が見たものって、水を浴びてショートしたせいで
湯船に沈むアリスの姿だったんじゃないの…?」
「姫宮さんなら、間違いなくすぐに引き上げようとするでしょうね…。
誰かを呼んでいる間に、溺れ死んでしまうかもしれないから…」
「でも、その時湯船はシャワーから出続けた水が溜まっていた。
そしてηは漏電していた…あれだけ精密なロボットだ、相当強い電力が
流れていたんじゃないかな」
「そんなところに無防備に触れたら……当然感電死するでしょうね」
芍薬ベラ
「あ、だから蝶子ちゃんの両手に火傷があったの!両手をお湯につけたから…」
アヴェル
「白兎が見つけた時は、死後1時間は経っていた。それだけあれば、アリスが
完全に壊れて、流れ続けて溢れた水に漏れた電気も無くなるでしょうね」
栂木椎名
「つまり…これは事故だ。機械の故障に姫宮さんが巻き込まれたのであって、
殺人事件ではない。犯人なんていなかったんだよ」
みいな『こんな環境で起こった事故、ほんとに事故って言っていいのかな。
まあ、どっちでもいいんだけど…』
BREAK!!
▼クライマックス推理
沙梛百合籠が隠したアンプルを探すため、モノボウズ達が活動している一方、モノボウズ同様に島の管理ロボットである良田アリスも、またアンプルを探していた。
その活動の一環で、芍薬ベラ・物造白兎の片づけに参加していただのだが、白兎がプランターを崩してしまう。そのプランターには沙梛が島中に仕込んだフェイクのアンプルが刺さっており、それが割れて白兎の髪にかかってしまった。
アンプルの外見を知っていたアリスには、それが本物か偽物かの咄嗟の判断が出来なかった。そのため、急いで汚染部位…白兎の髪の毛を切除した。アリスにとっては島の安全管理のための当然の行動で、謝罪すべきことではない。それが白兎を怒らせてしまった。
怒った白兎はアリスを突き飛ばし、アリスは頭部に外傷を負ってしまう。小さな傷程度では問題なく活動できるアリスは、再びアンプル探しに戻った。その後アンプルが見つかり、時汚れていたアリスはシャワーで汚れを落とすことにした。
防水加工のアリスは、普段ならシャワー程度問題ない。しかし頭部に小さな傷が出来たことで、水が中に入り込みショートを起こし、そのまま浴槽の中に落ち、水が溜まった浴槽の中で漏電してしまった。
アリスを探しに来た蝶子は、浴槽に沈むアリスを見つけ、慌てて引き上げようとした。浴槽の中には電流が走っており、無防備に手をいれたアリスは感電し、そのままショック死してしまったのだ。