Chapter4
Chapter4―うたかたの記憶―裁判編(3)
モノボウズ
「そうですか…アリス……そうして、死んでしまったのですね…
お可哀そうに…」
いつになくしんみりと、気落ちしたかのように語るモノボウズ。感情プログラムの搭載されてない機体が、人の死には淡々とし、機械の命に嘆く様は、なんとも言えない気持ち悪さがあった。
今回は殺人ではなく、ただの事故。それでも人が死んだことには変わらない。そして、アリスが機械だったとしても、共に生活した彼女がいなくなったことで悲しむ者もいる。
誰かを責めることが出来ず、なんとも言えない後味の悪さが残った。
そんな苦さを抱えたまま、帰ろうとする足を止めてベラが口を開いた。
芍薬ベラ
栂木椎名
芍薬ベラ
「うーん…らーちゃん、まだ気になることがあるの…」
「気になるところ…?」
「なんで森の奥の建物に入れるようになったんだろうって。すごく大事な
書類とか置いてある場所で、ずっと鍵かかってたのに…不思議なの」
アヴェル
「ああ…それならきっとアリスが壊れたからでしょうね」
☂ 建物のロック
森の奥にある建物のロックについての資料。管理ロボットに施設のロック機能を持たせ、ロボットが活動停止になった時に緊急事態として一時的にロック解除となる。
物造白兎
アヴェル
アヴェル
アヴェル
「ロック機能をもった管理ロボット…それがアリスだったってことですか…」
「それと、もう一つ気になったのが…アリスの資料に持ち主から離れると
強制スリープモードになるって書いてあったことよ」
「島の管理ロボットの持ち主なら、それって島の管理者…
アタシ達をこの島に招いた人ってことよね」
「この島に来てから、ずっとアリスは活動し続けていた…ということは、
常に持ち主が近くにいるということ」
アヴェル
「つまり…島の管理人は、この島にいるはずよ」
静かに響く1つの仮定。
しかしその仮定は、おそらく限りなく真実に近いだろう。
モノボウズは何も言わない。それが肯定なのか、プログラムの範疇なのかは分からない。ただ、否定もせずにそこに浮いていた。
自分達をこの島に招いた人物が島の中にいる。何故この島に招き、何故コロシアイをさせ、何故アンプルを狙うのか。
「島の管理者を見つけ出して、このコロシアイの全貌を明らかにしよう」