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Chapter1

Chapter1―2xA+xyB=xyA+2xB
裁判編(3)

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角沢才羅

「…気になっていたんだが、芍薬が長髪の女を見た時、

 誰か分からないくらい暗かったんだろ?何故それが女だってわかったんだ」

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芍薬ベラ

「わかるの!だって【らーちゃんより背が低かった】から!

 らーちゃんより背が低いのは女の子しかいないの!」

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物造白兎

「お花のおねーさんの服を直すときに、ついでにモノボウズに全員の

 でかさも聞いたのです。女の子で一番でけぇのがお花のおねーさんで、

 男がでいとれーだー?のおっさんなのです」

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御透ミシュカ

「ベラちゃん、結構背高いもんね…いくつあるの?」

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芍薬ベラ

「【176cm】なの!遠くのお花まで見えるの!ほら!間違ってないなの!」

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アヴェル

「アタシが【175cm】だから、1cm差なのね」

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沙梛百合籠

「みなさん背が高いのね。羨ましいわ……」

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栂木椎名

「男の子の中で一番背が低い僕と一緒か…なら、

 見かけたのは女の子で間違いないだろうね」

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アヴェル

「…あら?でも…たしか【音切君】ってワタシより背が低いわよね…?」

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御透ミシュカ

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君野大翔

「あれ、そーなの?(お隣の音切君を見る)」

「そういえばパーティの時に見たけど、おとり君って結構髪の毛長いよね。

 マフラーでわかりにくかったけどさ」

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音切おとり

「え…っ、いや、いやいやいや、皆よく見てよ~ほら、隣のベラちゃんより、

 俺の方がちょっと高いでしょ?俺、身長【180cm】あるんだよ?」

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アヴェル

「確かに今はそうだけど、昨日図書館にいた時、届かないからってアタシに本を取るのを頼んだわよね【靴を脱ぐと170cm】くらいしかないんじゃないの?」

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桜春もち

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芍薬ベラ

「すっごいシークレットシューズですね~」

「そうなの!?らーちゃんより低いなの……」

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音切おとり

「まってまって~!確かに身長低めなのコンプレックスでサバ呼んでる

 けど…俺、この恰好だよ!?

 男とか女以前に、俺ってひと目でわかるでしょ~!ね、ベラちゃん!」

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芍薬ベラ

「いくら暗くても、お面の耳や着物だったら分かると思うの…

 裾についてる鈴の音も聞こえなかったの!」

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音切おとり

「ほらね?そもそもらぶりちゃんが誰かを殺そうとした~ってところから

 間違いで、最初に言ってた通り、朝にらぶりちゃんがお風呂に

 入ってるのを襲ったんだよォ」

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​姫宮蝶子

「そういえば…らぶりさんのお洋服が脱衣所にあったから、私達も最初

 らぶりさんが入浴されてると思ったのですが…

 あの【お洋服はずぶぬれ】でしたよね」

☂ らぶりの服

女湯の脱衣所のカゴの中に置いてあった。制服から下着まで全てずぶ濡れの状態。僅かに血痕が残っている。

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​姫宮蝶子

「殺害された後に、入浴中に見せかけるために犯人が脱がしたとしても、

 濡らす意味はないですよね」

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良田アリス

「ん~…お掃除中に濡れちゃった、とか?」

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螺河鳴姫

「筋弛緩剤をらぶりちゃんが飲んでないなら、相当抵抗しただろうし…

 その時濡れてしまったのかもしれないね」

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大鳥外神

「なら【犯人も一緒に濡れた】のではないですか?

 音切さんの羽織りって濡れたまま着るには重たそうだし雫は垂れるし、

 脱いで移動するしかないでしょう」

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大鳥外神

「それに、お風呂場のゴム靴が1つなくなっていました。

 音切さん、裁判来る前に【鼻緒が切れて直したから出遅れた】って

 言っていましたよね。殺害する時に抵抗されて、鼻緒が切れてしまった

 から履くものがなくなって【ゴム靴を履いて帰ったのでは?」

☂ ゴム靴

温泉に設置されているフリーサイズのゴム靴。

1つ無くなっているようだ。

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芍薬ベラ

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音切おとり

大鳥外神 普通.png

大鳥外神

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音切おとり

「そっか、ゴム靴は高さがないから、ベラよりちっちゃくなっちゃったの!」

「そ…そんなのこじつけだ!鼻緒が切れたのは偶然だし、

 ゴム靴なんてコテージにもないから!」

「そりゃとっくに処分したでしょうね…

 ああ、水垢のついてるゴム靴を履いて歩くなんて考えるだけで…」

「だいたい、その女の証言がホントかどうかだってわかんないだろ!

 自分が犯人なのを誤魔化すために、適当な人間を見たって

 でっちあげたんだ!」

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芍薬ベラ

「らーちゃんそんなことしないなの!ほんとに見たの!」

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栂木椎名

「せっかくだもの!容疑を晴らすのに、白黒はっきりさせようじゃない、

 音切さん」

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音切おとり

「こじつけだけで人を犯罪者呼ばわりしやがって!

 そんなに言うなら証拠はあるんだろうな!?」

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栂木椎名

「…あるかもしれないよ、証拠」

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音切おとり

「…はぁ?」

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栂木椎名

「らぶりちゃんの爪だよ。【爪の内側に血がこびりついて】いて、

 【制服にも血の跡がついていた】。

 事件が起きた時、血が出るような怪我をしたってことだろうけど…

 らぶりちゃんの体にはどこにも傷がなかった」

☂ らぶりの遺体

衣類を一切身に着けておらず、湯につかった状態で発見された。外傷は見当たらない。爪の中に入り込んだ血液が固まっており、マニキュアが一部剥がれている。

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栂木椎名

「なら…怪我をしたのは【犯人】なんじゃない?」

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栂木椎名

「羽織の下は学ランだし、抵抗しながら爪で引っ掻ける場所なんて、

 手か顔しかないだろうね。なら…手と顔を見せてくれないかい?」

 椎名の目線に言葉を詰まらせるおとりは、わなわなと震えていた。仮面で表情は見えないが、怒りといら立ちが嫌でも伝わってくる。

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音切おとり

「…ああ、脱げばいいんだろ脱げば!」

 そう大声を上げながら、ばっと羽織と仮面が宙に舞う。

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音切おとり

「これで満足かよ無駄口野郎!」

 そこには、長い黒髪の青年が立っていた。苛立たしさを隠しもしない顔にはガーゼが当てられており、整った容姿が醜く見えた。

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沙梛百合籠

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御透ミシュカ

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音切おとり

「まあ、素敵なお顔。でも心はそうではないみたい。とっても残念ね」

「き、急に怖いんだけど…」

「言っとくがこの傷は、昨日図書館でそこのガキが落ちた時に巻き込まれて

 ついたもんだ。俺は事件と関係ねェよ、アホが!」

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螺河鳴姫

おとり2.png

音切おとり

「じゃあその傷、調べてもいいんだね?」

「おう調べてみろよ!素人が何の傷かなんて判別できるもんならな!」

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螺河鳴姫

「…らぶりちゃんの指についていたマニキュアはね、ラメ入りで洗った

 程度じゃ簡単に落ちないんだ。それが剥げるくらい深く爪が食い込んだなら…

 まだその傷口にマニキュアが残ってるんじゃないかい?」

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おとり2.png

音切おとり

「なっ…な………んな、馬鹿な…っ」

らぶり「最悪……………」

BREAK!!!

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▼クライマックス推理

 

モノボウズによる黒槍の負傷とコロシアイの宣言が皆の心を揺さぶる中、最初に行動したのは【雨土筆らぶり】だった。

 

確実に殺害し、かつ自分以外に罪を擦り付けるため、彼女が選んだのは【温泉】だった。

先日の柵の崩壊により立ち入り禁止になっていた温泉が、掃除の手伝いのみ出入りが可能で人目に付かず、男湯と女湯が自由に行き来できることを知っていたからだ。

 

温泉なら証拠になりそうなものは洗い流せる上、柵の修理が終われば男湯と女湯は行き来が出来なくなる。

男湯に死体を置き、翌朝に死体が発見された後、犯人は男だと誘導するつもりだったのだろう。

 

らぶりは標的を男に絞り、かつ自分への警戒心を薄そうな【音切おとり】に声をかけ、夜の掃除に誘った。掃除を済ませてから、ショップで買った筋弛緩剤入りのジュースを標的に飲ませようとした。

ところがおとりはそれを飲まず、らぶりの目論見に気づき、逆に彼女の首を絞めて殺してしまう。

 

おとりはらぶりが入浴中に殺されたように見せかけるため、服を全て脱がせ死体を湯船に置いた。奇しくも、らぶりは自分がやろうとしたことを、そのままやり返されてしまったのだ。

 

後は立ち去るだけだったが、いくつか問題があった。らぶりが抵抗した時に、顔をひっかかれ、互いに服が全身ずぶ濡れになり、更に履いていた下駄の鼻緒が切れてしまったのだ。

 

顔の傷は浅く、服は水を吸った重たいものだけ脱ぐとして、裸足のままコテージまで戻るのは距離がある。そこで温泉に置いてあった、ゴム靴を履いて行くことにした。

 

その道中を芍薬ベラに目撃され、下駄を脱いだ分身長が低くなっていたおとりは、ベラに女性と勘違いされてしまった。

後は朝になり死体が発見されたあと、何食わぬ顔で合流した。抵抗したらぶりに顔をひっかかれ、その傷に彼女のマニキュアがついていることも気づかずに…。

Chapter1

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