chapter2-番子の墓に呼子鳥-
chapter2-番子の墓に呼ぶ子鳥-(非)日常編
活発な少女の笑い声が聞こえない。
たくましい革靴と乾いた金属が床を叩く音が聞こえない。
恒例となったお茶会に参加する者の口数は少なく、部屋から出てこない者にはちびエルが紅茶とお菓子の
デリバリーをしているらしい。
毒桃京知とカレブが死んでから幾日か過ぎたが、いまだ胸の奥がじくついて仕方がない。
この施設にいる多くの参加者は殺し殺される世界とは無縁の住人だ。それが皆で指さして人を処刑する様の
なんたる異様なことか。
モノエル
「秘密を握られれば積極的に動くかと思ったけど、アクティブすぎまちたねぇ、あの…ほら…色黒で大きい…なんでちたっけお名前?」
口があるかもわからない顔に紅茶を傾けたモノエルの口調は変わらない。
ここに足を踏み入れた時とまるで変らぬ口調に、うすら寒さを感じた。
モノエル
「才能を持つ皆しゃまの行動を見るならば、やはり才能そのものを
見るべきでしゅよね」
てろりんとかわいらしい着信音が電子手帳から響き、自身の手帳に視線を落とす。
そこにはでかでかと【才能披露試験】と描かれていた。
モノエル
「今からしばらくの間、試験期間を設けるでしゅ。その間に皆しゃんは、
今まで培った経験・知識・技術…才能をエルに披露してくだしゃい」
黒羽麗
「しけん……勉強的なやつ……?」
夜見塚灰慈
「(音の鳴るものを手に取れば訝しむように見ている)」
リリー
面屋敷浪漫
モノエル
「…………経験に知識を披露…………お嬢様も居ないのに…」
「…何がしたいんですか。」
「方法は自由でしゅ。個室で一人で夜に見せても、広場でみんなに朝に
見せても、なんなら今ここでもかまいましぇん。元と言われ才能の発揮も
難しい方もおられると思いましゅが、だからこそ人様に見せられる程度の
力を取り戻してほしいのでしゅよ」
エリアス
「……何かしらを披露すればよろしいのですね」
フェイ
「披露…といっても 難しいね……ふむ………… …」
比与森閑古
「ヒヨコを用意してくれたりするのかな?」
モノエル
「期日内に披露できなかった方は、才能を持つに値しないと判断して、
【処分】させていただくでしゅ」
「処分?」
踊瀬舞円華
遠雷紬
「……」
メアリー
「………死にものぐるいでやれ、ってことですかぁ……」
処分の言葉の意味を、モノエルはあえて語らない。
しかしその意味は、先に亡くなったあの二人と同じ末路だと言っているようなものだった。
天城飴梨
「偉そーなことだけは一丁前じゃん、ドジっ子マスコット。
は〜やってらんね マジ萎え」
滑川ぐみ
「……私はどうにでもなる、けど……」
面屋敷浪漫
「ヤだなぁ」
モノエル
「ただ…エルも暇じゃないし似たような才能を何回も見せられると
飽きちゃうし、後半の人は目も肥えてきて不利でしゅよね」
モノエル
「ここには音楽・踊り・芸術の才能が多くいましゅし、そこらへんの人は
まとめて【舞台】として披露してくだしゃい。その方がまとめて
見られるし、他人と一緒にやることで協調性と向上心をどーたらこーたら」
いかにも取ってつけたような定型文に一同の顔は苦い。
モノエル
「えーと、舞台に参加してもらうのは…敬称略で失礼。
遠雷紡、メアリー=アリア・カンタービレ、琴ノ緒閑寂、踊瀬舞円華、
面屋敷浪漫、花柳玲子でしゅね。舞台の順はこっちで適当に振ったから、
内容は各自自由にさせていただきましゅ」
モノエル
「どーしても出来ないって人は、似たようなので代用してもいいでしゅよ。
才能はもちろん、意気込みをエルは見たいんでしゅよ。
踊れないなら芝居でもすればいいし、歌えないなら楽器弾けばいいでしゅ」
モノエル
「皆しゃまが何を披露してくれるか、楽しみにしてましゅね~」