Prologue-デモ裁判編-
Prologue-デモ裁判編-後編
お茶会広間に集められた23人と1匹は、いつもと違いお茶のない真っ白なテーブルを囲んでいた。
モノエルのコップが無くなると言う、事件とも呼べない事件のために開かれる裁判。
あまりにもお粗末なそこに集まった半分以上は成人済みで、もはやおままごとじみたその場で、
モノエルは至って真剣な顔をして言った。
モノエル
モノエル
「学級裁判…半分くらい成人済みだけど、まぁいいでしゅ。施設の中の
もめごとは、みんなで相談して解決!これがこの施設でのルールでしゅ」
「誰かを一方的に疑ったり、納得してなのにうなずいたり…
そんなの嫌でしゅよね?それが大人ってものでしゅけど、生活を共にする
皆しゃまには仲良くしてほしいのでしゅよ」
フェイ
「ふむ…捜査の成果を 発表ということだね?」
茶渡利三沙
「話し合いね…少しばかり面倒だな…」
面屋敷浪漫
「みんなで探すじゃだめなんですかぁ?」
モノエル
「今回の事件でしゅけど、皆しゃまはその日何をしてたんでしゅっけ?」
夜見塚灰慈
「全員でお茶会をしていた」
毒桃京知
「ミルクも砂糖も用意してなくて、モノエルにブーイングがあったっけ」
【事件当日のお茶会】
開始時は全員が参加し、帰った時間はばらばら。
本日は紅茶の味を楽しむためにと砂糖とミルクを用意しておらず、
モノエルにブーイングが上がっていた。
モノエル
「そう、お茶会でしゅ。エルのティーカップがなくなったでしゅ。
ティータイムは忙しいエルの大事なひと時…
それを盗むなんて、あまりに非人道的行為なのでしゅ!」
モノエル
「こういう場合、まず怪しい人を探すでしゅ。容疑者ってやつでしゅね。
誰が怪しいか、わかりましゅか?」
フェイ
エリアス
「お茶会の後に2人残ったらしいね」
「糸色様と黒羽様を見たと…貴重な目撃情報ですね」
【残った二人】
巡回中のちびエルによると、お茶会終了後に残ったのは【糸色恋花】【黒羽麗】の2人のようだ。
2人が出ていった後に帰ってきた人はいない。
モノエル
「ふむふむ、残ったのはお二人でしゅか。お茶会広間に行かなかったら、
エルのコップを盗むなんてことはとてもできましぇん。
怪しいのは間違いなくこの人達でしゅね!」
毒桃京知
「それじゃその人たちに聞くのが一番てっとり早いじゃない。
実際二人は何してたの?」
茶渡利三沙
「黒羽さんが騒ぎを聞いたらしいけど、そこが気になるところかな?」
遠雷紬
「・・・(ノートに糸色恋花のことが書いてある)」
【糸色恋花の証言】
「食器を厨房で洗ったのは私よ。それで…ンン、ごめんなさい。食器の数や種類までは
覚えてないの。黒羽さんが残った食事を片付けに行って、途中で別れたのは覚えてるわ。
後は…私が洗い終えた後に、残飯入れに使ったお皿を洗いに来た黒羽さんと
入れ違いになったわ」
【黒羽麗の証言】
「うるは残飯処理?の為にトラッシュルームにいたよ〜。
片付け終わった後は運んだ食器とか洗うのに厨房にいたかな。
そういや食器洗いしてた時なんか騒がしかったような?」
モノエル
「コップを片付けたのは糸色しゃま…ま、まさかエルに何か恨みでも!?
コップに何かできたのは糸色しゃましかいないでしゅ!」
天城飴梨
茶渡利三沙
「コップ1個でここまで言うって よほど大事だったんだな」
「モノエル…駄目じゃないか、恨みを買うようなことをしては
(くすくす笑いながら)」
花柳玲子
「そう聞くと怪しいのは糸色ちゃんだけどぉ……。
……あの子がそんなことするかしらぁ?」
「糸色さんとカレブさんがぶつかってしまったんだね」
滑川ぐみ
踊瀬舞円華
「そういえば、厨房前で何かあったらしいな」
【厨房前廊下での騒ぎ】
厨房から出てきた糸色恋花とカレブがぶつかり、カレブの持っていた花瓶が
割れて水がこぼれてしまった。二人でそれを片付け終えた直後に
モノエルからの招集がかかった。
描成絵智
「大丈夫?ケガとか…」
糸色恋花
「し、してないわよ余計なことなんて」
夜見塚灰慈
「…まあコップを捨てるにしろ隠すにしろ、厨房を出た直後からカレブと
いたなら今でも持ってるはずだろう。まあ、コップなんてかさばるもの、
かくして置けると思えないけれど。」
モノエル
「糸色しゃまに犯行は不可能…となると………黒羽しゃま…?」
花柳玲子
「黒羽さんは残飯処理のために糸色ちゃんと別れた後、厨房に入る時に
入れ違いになっているってことかしらぁ。
…じゃ、厨房になかったらトラッシュルームにあるってことになるのぉ?」
エリアス
「ゴミを誤った場所に捨てるとブザーが鳴るのですね…フム」
滑川ぐみ
「ブザーがどれくらい鳴るのか知らないけど、割れ物のところには
花柄の陶器の欠片しかなかったな」
【トラッシュルームのブザー】
ゴミを分別せず誤った場所に捨てるとブザーが鳴る仕組みに
なっている。
【割れ物専用ゴミ箱】
花柄の入った陶器の欠片が入っている。
花柳玲子
「分別とか、ちゃんとしてるのねぇ」
フェイ
「うむ……実に素晴らしい技術だよ」
毒桃京知
「ブザーがあるから他のごみ箱に隠すこともできないようだし、
本当はコップを割っちゃって捨てたんじゃないの?」
モノエル
「エルのコップわれちゃったんでしゅか!?
大事に大事にぴかぴかに磨いてたのに…」
フェイ
「モノエルくんのコップは真っ白なんだろう?
ならさっきの花柄は違うみたいだね」
【モノエルのコップ】
「エルのコップはきれーな真っ白のコップでしゅ!
エル専用のオーダーメイドだから、使っちゃだめしゅよ!」
遠雷紬
踊瀬舞円華
「……(白?)」
「オーダーメイドだったんだね」
滑川ぐみ
「捨てられてたのは花柄だったし、あれは花瓶じゃないのか?
花柳玲子
「黒羽さんと糸色ちゃんは入れ違いで厨房に入っているし、
他の場所に隠す時間もなかったでしょうねぇ…」
毒桃京知
茶渡利三沙
「トラッシュルームにもない、厨房や他の部屋にもない、
隠し持ってもいない…ならコップはどこにいったのかしら?」
「さてさて、コップはいずこへ消えたんだろうねえ」
フェイ
「消えてしまったコップ……か」
黒羽麗
「意外とその辺に置いてあったりするとか?」
モノエル
「わからなくなった時は、別のものに視点を向けるのも大事でしゅ。
小さな違和感や手掛かりがこそ見逃せないものでしゅからね。
他に何か見つけたものや、いつもと違うことはありまちたか?」
踊瀬舞円華
メアリー
「白…白いミルクピッチャーならありましたねぇ…」
「1つだけ濡れていたね?」
【ミルクピッチャーの棚】
様々なデザインのミルクピッチャーがきれいに並んでいる。
一番手前の白いピッチャーだけ洗い立てのようにわずかに濡れている。
モノエル
「ミルクピッチャー?へんでしゅね、今日のお茶会でミルクは出してない
でしゅよ?食器リストにも乗ってないでしゅし…」
花柳玲子
「あらぁ…どうして出していないはずのミルクピッチャーが濡れてるのかしら」
夜見塚灰慈
「使用したからじゃないか?」
花柳玲子
「でも誰か使っていたぁ…?見てない気がするわぁ」
黒羽麗
フェイ
緑紅茶
描成絵智
「ミルクピッチャーが……泣いた…?」
「ミルクピッチャー、泣くほど嫌な事でもあったのかな……」
「ミルクピッチャーが泣いたら涙はミルクなのかもな」
「ミルクピッチャーだって泣きたいときも…あるのかなぁ…?」
エリアス
糸色恋花
フェイ
エリアス
面屋敷浪漫
糸色恋花
天城飴梨
「フェイ様…そちら強めの幻覚です」
「強めの幻覚(強めの幻覚)」
「しかしエリィ… ここは日本だよ……」
「……。日本ならありえますね…」
「み、ミルクピッチャーだって泣くときはあるでしょうに…。………くっ。」
「誰だよミルクピッチャー泣かせたの」
「……って、違う違う、話が逸れちゃってるわ」
滑川ぐみ
「……なぁ、本当にあれはミルクピッチャーだったのか?
なくなったコップってモノエル専用のオーダーメイドって言ってたよな?
高級ってことなのかと思ってたけど……モノエルにぴったりってことなら、
私達にとっては人形のままごとセットみたいに小さいんじゃないか?」
モノエル
「皆しゃんのコップの大きさだったらエルにとっては
どんぶりサイズでしゅよ。そんなに飲めないでしゅ!」
毒桃京知
モノエル
「…モノエルのコップの色は?」
「白でしゅ」
花柳玲子
「濡れていたピッチャーの色はぁ?」
茶渡利三沙
「白くて小さかったねえ…」
モノエル
「……………」
ひらりと裁判上から飛び立つモノエル。しばしの静寂、数分後の構内アナウンス。
モノエル
「ありまちたーーーー!!!!!!!」
花柳玲子
「……。……つまり、小さいカップをピッチャーと間違えて別のところに
片付けていたから見つからなかった、と」
毒桃京知
「小さいなら最初っから言ってよね!!!」
モノエル
「むきー!エルが小さいんだからコップも小さいのは当たり前でしゅ!」
エリアス
黒羽麗
茶渡利三沙
遠雷紬
「えぇ〜……そんなに大事なら名前書いとけし名前」
「…首にぶら下げておいてください」
「………(なにこれ)」
「ぷ、ははっ、とんだおまぬけさんだ」
夜見塚灰慈
「部屋に戻らせてもらっても?」
天城飴梨
面屋敷浪漫
「次同じような事があれば、先ずはしっかり探してみましょうか…」
「んー あったならよかったじゃん」
花柳玲子
「とりあえず疑った糸色ちゃんと黒羽さんに謝っておいたらぁ?」
黒羽麗
「よくも疑ってくれたな〜このこの〜」
糸色恋花
「あわ……ごめんなさい、私が見誤っちゃったかも……(しょも……)」
茶渡利三沙
「恋花、そんなにしょげなくてもいいと思うよ?」