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chapter1-毒食わば骨舐れ-

chapter1-毒食わば骨舐れ-(非)日常編

コップ消失事件からしばらくたった日のこと。
ビンゴ大会という料理の日々も終え、再び中だるみののんびりした朝に、モノエルは言った。

*ビンゴ大会…1章と2章の間に行われたミニイベント。出てきた食材で料理をしてモノエルに質問できるコーナー。

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​モノエル

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​モノエル

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​モノエル

「さてさて、ビンゴ大会も終わったところで…

 皆しゃま、そろそろ体がなまってるんじゃないでしゅか?」

「あえてこちらから何も指示せず自由に過ごして頂きまちたが、

 皆しゃま全体運動不足でしゅ!」

「…というわけで、この度この建物の隣に【体育館】をご用意しまちた!

 この後体力測定をしゅるので、皆しゃまどうぞこちらへ~」

モノエルに連れられてやってきたのは、いつのまに建ったのか立派な体育館だった。
一般的な市民体育館のようで、中にはいくつかの測定器具やマット、簡易プールまで準備されていた。

 

「必要な運動はしてるわよぉ、言われなくったって」

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踊瀬舞円華

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花柳玲子

「へえ、体育館。それは有難いな」

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緑紅茶

「いつのまにこんな物が…」

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​モノエル

「項目は…腕立て伏せ、腹筋、シャトルラン、スクワット、25m水泳……

 一通りやって皆しゃまの今の状態を確認するでしゅ。

 健康管理もエルの役目のひとつでしゅからね」

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夜見塚灰慈

「筋トレ、ぐらいなら部屋でしているんだけどな…」

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遠雷紬

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メアリー

「……(やりたくない)」

「まともな運動なんて何年……」

なんでこんなところまで来て体力測定、と不満の声があがるのを一括するように、
モノエルは小さな竹刀をぺちんと床に叩きつけた。

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​モノエル

「どんな才能でも体力は必要でしゅ!健康のために毎日お茶会は

 してましゅけど、さすがに筋肉を育てることはできないんでしゅから。

 つべこべ言わず、とっととやるでしゅ!」

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​モノエル

「自分に出来る範囲の実力を発揮して青春の汗を流すでしゅ!

 あ、体調が悪かったら一部項目を免除するでしゅけど、

 さぼりは見逃さないでしゅ」

体操服にも着替えていないのにと文句が聞こえる中、皆は思い思いに測定に取り掛かる。
突拍子もないイベントだが、この施設に参加した以上は言われたことを熟さねば参加した意味がない。

しばし体育館に足音が賑やかに鳴り響いた…。

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糸色恋花

「体操服とスニーカーを渡されないと無理があるわ。私、スカートだもの

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リリー

「案外楽勝ね」 

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毒桃京知

「うう…体力はあるけど体育は嫌いだったのよねぇ」

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エリアス

「…せめて先に言っておいてくれませんか(ブツブツ言いながらマントを外し)」

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​モノエル

「せっかくでしゅし、記念に写真を…はいチーズ!

 ほらちびエル、測定に写真に記録、しっかりするでしゅよ!」

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​モノエル

「ふむふむ…むむ?そういえば一部の項目が出来ない人もいまちたね。

 その人は仕方ないから除外、と…。人にはできることと出来ないことが

 ありましゅからね」

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​モノエル

「にしてもこの数値、この体たらく……はぁ~~~~~~」

モノエルはこれ見よがしに深く息を吐き出す。
ちらりとあたりを一瞥する赤いまなざしは、いつもと同じなのになぜか不気味に感じた。

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​モノエル

「義務教育も終わったいい大人が半分もいて、それでも元超高校級でしゅか? 

 やる気や決意ってものがてんで感じられないでしゅよ。

 もう少し自主性ってものを見せてほちいでしゅね」

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琴ノ緒閑寂

「運動は俺の仕事じゃねえし……」

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天城飴梨

「毎日茶会させられてちゃ そりゃあねえ」

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夜見塚灰慈

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花柳玲子

「言われたとおり、毎日お茶は飲んでいたが?」

「義務教育の終わった大人だからやる気ないのよぉ」

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​モノエル

「でも、そういわれてもやる気は出ないし、追い詰められて

 やっと立ち上がる人って、いましゅものね」

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​モノエル

「そこでそこで、エルは考えたのでしゅ!

 どうやったら皆しゃまがやる気を出してくれるかを!」

黒い瞳の中の白い眼光は、きらきらと炯々と煌々と爛々と、何かを期待するように、何かに焦がれるように瞬く。

白黒の小さなマスコットの手には、いつの間にか白い封筒の束が握られていた。
ちびエルが一斉に一人一封ずつ渡したそれは、とても薄く中に紙が入っていた。

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面屋敷浪漫

「自主性?」

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フェイ

「これは何だい…??」

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緑紅茶

「…?封筒…?」

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​モノエル

「これは皆しゃまの【秘密】でしゅ。内緒ナイショ、誰にも言えない秘め事が、その封筒の中にランダムで入ってるでしゅ」

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夜見塚灰慈

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踊瀬舞円華

「…………は?」

「秘密?」

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面屋敷浪漫

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メアリー

「えへ!面白いですね!」

「……秘密?どうして、いきなり………」

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​モノエル

「もし皆しゃまがやる気を出して【行動】してくなければ…

 この秘密を一切包み隠さず公表するでしゅ」

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​モノエル

「エルだってつらいでしゅよ、こんな脅しみたいなこと。

 でも、皆しゃまの才能のためなんでしゅよ」

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​モノエル

「何をすればいいか?それこそ自分で考えてくだしゃい。

 舞台はエルたちが用意しまちた。なんでもかんでも周りに聞いていては、

 立派な才能になれましぇんからね」

突然に突き付けられたそれは、支援とは名ばかりの脅迫だった。
誰にだって秘密はある。
それを暴き、その人を解体して見世物にする悪趣味なショーのようなことを、
目の前のマスコットは慈悲の眼差しで吐いてのけた。

本気で、コレが自分達の為になるのだと思っているのか。

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糸色恋花

「だ、だって、そりゃ……超高校級って……世界が望む、物じゃない……。

 その為だったら皆……、でも……」

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面屋敷浪漫

「放任主義もいいとこです。」

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天城飴梨

「…ふぅ〜ん?」

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緑紅茶

「…秘密なんて言っても、大したことない秘密だろ」

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​モノエル

「…おや、おやおやおやおや、もしかして信じてらっしゃらない?

 やだなー、才能支援団体カスタード協会は、才能ある皆しゃまのことを

 よぉーく知っているでしゅよ」

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​モノエル

「んー、たーとーえーばー」

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​モノエル

メアリー=アリア・カンタービレしゃま」

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​モノエル

「有名な歌姫だったのでしゅが、火遊びが過ぎて不倫をして芸能界を

 干されたんでしゅよね。いけない恋はろくな結果をもたらさないでしゅ。

 テレビで騒ぎになったから知ってる人もいるかもしれましぇんが」

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メアリー

「……これは、不愉快ですね」

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琴ノ緒閑寂

「人の秘密をべらべらと……」

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糸色恋花

「……やだ…………」

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緑紅茶

「…ニュースで見たことあるから知ってる。その程度で秘密か?」

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​モノエル

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​モノエル

 「1人じゃ信用できない?んーそれじゃ次は…夜見塚灰慈しゃま」

「あなたしゃまはとってもアウトローな、社会の害悪の元に生まれた人…

 分かりやすく言えば極道の家に生まれまちたね。

 でもでも、カスタード協会は生まれや育ちは関係なく、

 全ての才能を受け入れましゅよ!」

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夜見塚灰慈

「……(モノエルに掴みかかろうとする)」

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毒桃京知

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遠雷紬

「…!(夜見塚を止めている)」

「不倫の次は極道…!?」

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踊瀬舞円華

「……(少し顔を顰めている)」

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​モノエル

「どうでしゅ?これでエル達が皆しゃまの秘密をばっちし握っていることは、

 ご理解いただけたと思いましゅ」

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​モノエル

「今出した秘密はかる~いジャブ、まぁ知られてもいっかくらいのもの

 でしゅ。本当の秘密は、お手元にあるそちら、でしゅよ」

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天城飴梨

「はぁ?これでジャブ? …正気かよこいつ」

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エリアス

「…ここにはプライバシーというものが無いのですか」

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琴ノ緒閑寂

「……知られてもいっかって反応じゃねえだろ」

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糸色恋花

「……いい加減にしてよ……!馬っ鹿じゃないの……!」

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滑川ぐみ

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フェイ

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踊瀬舞円華

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毒桃京知

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面屋敷浪漫

「……どう、しよう……」

「どうしたものか…………」

「困ったねぇ」

「……なによ、これ…これが、あの人の秘密…?」

「これを知って私にどうしろって言うんですかぁ〜?

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​モノエル

「自分のどんな秘密が誰の手に渡ったか…

 どっきどきのわっくわくでしゅね!手にした秘密をばらすも隠すも、

 皆しゃまにお任せするでしゅ」

モノエルはそう言い残し、ころころと鈴の様に笑いながらどこかへ飛んでいく。

残された者の手に渡った小さな封筒。
 
手の中に納まる小さな封筒に、誰かの秘密が入っている。
その事実をおぞましく感じたか、面白いと感じたか、どうでもいいと感じたか。
 


一つ確かなのは、その光景をモノエルと同じ様に嗤っていた者がいたことだった。

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chapter1-毒食わば骨舐れ-

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