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chapter6-KASU-TURD-
chapter6-KASU-TURD-異常編
ぴーん ぽーん ぱーん ぽーん♪
そのアナウンス音は、何の前触れもなく昼下がりに響き渡った。
死体が見つかった時以外に震えることのなかったスピーカーを見上げれば、
モノエルの舌っ足らずの言葉が続いた。
モノエル
『皆しゃまがお茶会に参加してくれなくなったから、わざわざアナウンスを
使う羽目になったでしゅ。まったく困った方達でしゅねぇ』
モノエル
『最近じゃめっきり静かになったし、ここまで頑張ってきた皆しゃまに
ひとつプレゼントをしてあげましゅ。ありがたーく受け取るでしゅよ!』
糸色恋花
「…あんなものわかってて飲むわけないでしょ……」
花柳玲子
心条裁己
「……なぁに?今更ぁ」
「プレゼント?」
アナウンスが途切れると同時に、施設のあちこちに設置されたアロマポットが煙を吹き出す。
その香りがよくないものだとわかっていても、抗いがたい香にくらりと眩暈を起こし、
口をふさぐのも忘れてしまう。
茶渡利三沙
「…うわ…っ」
遠雷紬
「……!?」
心条裁己
「!? っ、しまっ……!」
ぼんやりと滲む思考が天井を仰いで床に落ちた後、意識をなんとか手繰り寄せてみれば
ソレらはそこにいた。
それはかつて失った命。それはかつていなくなった姿。それはかつて聞こえなくなった声。
生と死の越えられぬ垣根を嘲笑うように、その姿が視界に映っていた。
花柳玲子
「……は?」
描成絵智
『え……』
面屋敷浪漫
『?何をそんな』
踊瀬舞円華
『…………』
花柳玲子
糸色恋花
「…………なによこれ、また幻覚?」
「ひっ………!お、おば、……おおお、おばけ……………?????
「何コレ何コレ何コレ……どういう事よ…!?」
茶渡利三沙
「…は、はは…死者の霊がみえるなんて…」
カレブ
『ほぅ。なるほど?』
黒羽麗
『……もしかして見えてる系?おーいおーい…すごーい!
なんか知らんけどみんな見えてるぽい!れーかんかくせーってやつ!?』
メアリー
『モノエルさんったら何したんで……あらぁ?
もしかして、見えちゃってます?』
描成絵智
『……なんでみんな驚いて……?え?!見えてるんですか僕たち?!』
エリアス
『……これはこれは… とんだサプライズですね』
糸色恋花
「わけわかんない……………」
茶渡利三沙
「……なんというか、皆久々だな…?」
心条裁己
「……幻覚、だろうが、これは……」
カレブ
『はは。何が起こってもおかしく無いのはわかっていたがな。
また歩ける様になったのもうん、悪くは無い。』
黒羽麗
『お茶ぴ……はやっぱ居ないかぁ……』
描成絵智
『(鉛筆を触ろうとして)……あー……これは、ダメなんだ……。
あはは、……ワンチャンないか……』
面屋敷浪漫
『なんだ、物は持てないのですね。お茶、貰おうと思ったのに』
モノエル
「これは神の恩情、しばしの懐かしき顔ぶれを楽しむでしゅ~」
死した彼らを目の前に生者は立ちすくむ。
手を伸ばした者もいたかもしれないが、その手が何かをつかむことはなく向こう側へすり抜けてしまう。
不安定で不確かで、紛れもない紛い物。
だとしても、そこに彼らは確かにいた。
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