chapter2-番子の墓に呼子鳥-
chapter2-番子の墓に呼子鳥-裁判前編
2度目の裁判、再び起こった殺人事件。
エレベーターの乗り組む影が3つも減り、隙間風が通り抜けるようなもの悲しさと無音で包まれていた。
下へ、下へ、降り立つ裁判場に遺影はこれで5つ。
モノエル
「さて、またも悲しい事件が起こってしまいまちた。
それも3人もの命が失われて、エルは…エルはとっても悲しいでしゅ」
モノエル
糸色恋花
「亡くなった3人のためにも、クロは犯行を隠しきり、シロはクロを暴いて
くだしゃい。でなければ彼らの死が無駄になってしまいましゅからね!」
「ほんと、ふざけてる」
花柳玲子
「…白々しい羽虫だことぉ」
モノエル
「亡くなったのは比与森閑古、滑川ぐみ、天城飴梨の3名。
状態はモノエルファイルを見るとして…比与森しゃまと滑川しゃまは
【刺殺】されていましゅね。【凶器は何】で、【どこ】にありまちたか?」
踊瀬舞円華
「遺体の傍に血の付いたアイスピックが落ちていたね。
バーの備品らしいけど…」
糸色恋花
「人の部屋に入るのも気が引けたけど…天城さんの部屋にナイフがあったわ」
ユウヒ
「たしかそのナイフって、教会のものですよね~」
茶渡利三沙
「個人の電子手帳でしか入れないプライベートルームに、
足を踏み入れるのって少しばかり躊躇するよね」
【アイスピック】
比与森の遺体の傍に落ちていた血の付いたアイスピック。
バーの備品で誰でも取ることが可能。比与森の遺体の傷跡と形状が一致している。
【ナイフ】
天城の部屋から発見されたナイフ。血がついており天城の上着にくるまれていた。滑川の遺体の傷跡と形状が一致している。元々は教会に飾ってあったもの。
【天城の部屋】
事件が発生し、モノエルが解錠するまで鍵がかかっていた。天城の上着に血まみれのナイフがくるまり引き出しの奥にしまってある。この部屋に限らず、各個室は電子手帳以外で出入りすることは不可能。
花柳玲子
「……。…要するに、飴梨以外には開けられない部屋に…
…滑川ちゃんの殺害に使用されたナイフがあったってことねぇ」
モノエル
「むむむ、天城しゃまの部屋になぜそんなものが…?
他に天城しゃまに関係ありそうなことはあるでちか?」
茶渡利三沙
「バーの入室記録なんだけど、最後に入った私の少し前に
天城の記録が残っていたよ」
【バーの入室記録】
バーは電子手帳で記録を付けないと入室ができない。
10:00「メアリー=アリア・カンタービレ」
10:30「紅緑茶」
11:15「琴ノ緒閑寂」
11:35「比与森閑古」
12:05「天城飴梨」
12:15「茶渡利三沙」
モノエル
「死体が見つかったバーでしゅけど、被害者の比与森しゃまの後に
天城しゃまの入室記録が残っていましゅね」
琴ノ緒閑寂
「そういえば、バーで天城が誰かと言い争っているような声を聞いたような」
紅緑茶
「カンタービレが舞台前なのに酒を飲んでいたな…。
俺が飲んでる途中で出て行ったよ」
糸色恋花
「退室は記録されないのかしら」
モノエル
「退室は記録されましぇんね!あくまで入室確認だけでしゅ」
花柳玲子
「仮に。…仮に飴梨が犯人だとして、どうして彼女は階段下で
死んでいたのかしらぁ?二人を殺して凶器も自室に隠して…
…なのにまた二階に上ったら疑われるわぁ」
琴ノ緒閑寂
「教会には天城の髪飾りが落ちていた。
天城は2人を殺した後ナイフを隠しに1階に行ったが、髪飾りが足りず
落としたことに気づいて2階の教会へ戻ろうとした。
その時足を滑らせて転落死したんじゃないか?」
【天城の髪飾り】
天城が髪につけていた飴を模した髪飾り。滑川の遺体の傍に落ちていた。
リリー
「…………飴梨ちゃんがくれたのと同じものね……」
花柳玲子
「……こないだの件も現場の遺留品が証拠だったものねぇ」
夜見塚灰慈
「自身の髪飾りを落としたのに気付かないのか?」
紅緑茶
「いくつか付けていたしな…1つ落としてもわからないかもしれない」
花柳玲子
「……じゃ、次ねぇ。どうしてもう一つの凶器は現場にあったのかしらねぇ。
ナイフはわざわざ部屋に隠したっていうのに」
茶渡利三沙
「確かに、武器を二つ使った訳でもあるまいに」
モノエル
「人を殺した後なんて、慌ててまともな判断なんて出来ましぇんよ。
前の人殺しの軍人…名前なんでちたっけ?その人は殺しのプロだけど
天城しゃまはただのお菓子好きな評論家でしゅからね」
花柳玲子
「バーの記録と髪飾り…クロは飴梨って…状況証拠的にはなりそうだけれど。
……私はねぇ、納得できないのよぉ」
紅緑茶
「死亡推定時刻の12時前後…体育館で舞台をやって、人が集まっていたな」
【アーティストの舞台】
舞台で輝く才能達による共同舞台。モノエルに言われてしぶしぶやってるらしい。
司会:ユウヒ 音楽提供:琴ノ緒
11:30~花柳玲子:バレエ
11:40~面屋敷:舞い
11:50~メアリー:歌
12:00~遠雷:ギター演奏
12:10~踊瀬:踊り
ユウヒ
「舞台はやりましたけど~見に来た人はまちまちでしたし、途中で入って
途中で帰る~なんて人もいましたよぅ。だから人の出入りはさすがに
覚えてませんね~」
踊瀬舞円華
「舞台で踊るなんて本当に久しぶりで、少し緊張したよ。
でもまさか、自分の演目中にあんな騒ぎになるなんてね……」
面屋敷浪漫
「ちゃんとしたリハーサルはしていませんでしたが、もたつかずに
予定時間ピッタリに進んでいましたよ。流石、みなさん元超高校級だけ
ありますね♪」
メアリー
「Hmm…舞台で私の番になった時、遠くで柔らかい何かが落ちるような音が
聞こえたんですよぉ。確か、階段の方向だと思いますわ。」
遠雷紬
「…[ぶたい中に、遠くでガラスが割れるような音がきこえました。
自分がやっている時にきこえたので、よくおぼえています。]」
紅緑茶
「音楽系の才能が言うなら、間違いはないだろう」
「………舞台があった時、…耳の良い遠雷さんとメアリーさんは音を聞いている。
…落ちる音は天城さんが転落した音、ガラスの音は比与森さんに落ちてきた
酒瓶だろうな」
夜見塚灰慈
夜見塚灰慈
「……だから、そうすると、天城さんが死んだのが11:50、
比与森さんが死んだのが12:00ということになる。
天城さんに比与森さんを殺すことは不可能になる、よな」
花柳玲子
「……そうねぇ。だからおそらくは、飴梨は真犯人に罪を被せられて
…殺された。ああ、クソッタレ」
糸色恋花
「………ひどい」
リリー
「ホントー…最悪よねぇ~」
茶渡利三沙
「笑顔で怒っている状態というのも中々怖いものだな…」
モノエル
「天城しゃまも被害者でちたか!およよ、お可哀そうに!
…しかしそうなると、一体誰が犯人なのでちか?」
花柳玲子
「バーに入った記録のある人…、とはいえカンタービレさんは舞台に出てたし
茶渡利さんは事件の後だから除くとして。
琴ノ緒さんと紅緑さんが怪しい……かしらねぇ。
バーは退室時間がわからないから、どちらもあり得るわぁ」
琴ノ緒閑寂
「はあ?」
紅緑茶
「お、俺か…?」
ユウヒ
「第三者!いや第四者がいるんですね〜」
茶渡利三沙
「人が複数絡むと事件というものは複雑になるのだな」
紅緑茶
「俺はバーに入ったが、比与森に会っていない。証明のしようがないが…。
…そのあとは1人でいたし、捜査が始まるまで誰にも会っていない」
琴ノ緒閑寂
「俺もバーには入ったよ。でもすぐに出たし誰にも会わなかった。
そのあとは……どうだったかな。そうだ、風呂に入って、
描成の声が聞こえたから教会に行ったんだ」
紅緑茶
「それに殺す動機もない。俺は比与森や滑川とはほとんど話したことが
ないんだぞ?」
琴ノ緒閑寂
「最初に比与森の死体を見つけたのは茶渡利だけどよ、その時何か細工だって
出来たかもしれないだろ?」
紅緑茶
「俺に返り血がついているように見えるか?被害者の状況を見ると犯人は
それなりに血を浴びたはずだ。」
琴ノ緒閑寂
「それに天城が犯人じゃないってんなら、なんで天城の部屋に凶器があるんだよ。
天城以外その部屋は開けられないはずだろ」
心条裁己
「個室は電子手帳を使えば本人でなくても出入り可能ですよね。
天城さん自身は何も持っていなかったのですから…)
…犯人が彼女の遺体から持ち去って部屋を開けたのでしょう」
【天城の死体】
頭部と全身に打撲痕がある。死因は頭部座礁で、10分程は生きていたようだ。床の傷と頭部の傷が一致している他、階段の段差と外傷が一致している。
上着を着ておらず、ズボンの中を見ても何も所持していない。
髪飾りが一部なくなっているようだ。
花柳玲子
「でも、飴梨に罪を被せるなら、彼女が電子手帳を持ってないと
成り立たないわよねぇ。…どうしてそこになくて、
そしてどこにあるのかしらぁ?」
紅緑茶
「天城が電子手帳を持っていないと偽造が成り立たない…
なら犯人は電子手帳を戻せなかったんじゃないか?
おそらく、天城の死体に戻す前に死体が発見されたんだろう。
花柳玲子
「……て、ことは。手帳は今も犯人が持っている、ってこと。
…飴梨のバーの利用記録が比与森さんの後になっていたのも…
…犯人が飴梨の手帳で記録をつけたんでしょうねぇ。
モノエル
「お二人とも、今ここで身体測定をするでち!
大丈夫、手帳が見つからなかったら犯人じゃないってことでしゅ!」
琴ノ緒閑寂
「……」
琴ノ緒閑寂
「……チッ」
琴ノ緒閑寂
「……早く処分したかったのによ。全員熱心に捜査して1人になる時間がな。
いの一番に処分するべきだったわ」
茶渡利三沙
「…おやまあ」
踊瀬舞円華
「……」
ユウヒ
「あら〜ご主人様でしたか〜、でもまだまだ謎は残っているような〜?」