Chapter3
Chapter3―少年少女だった日の思い出―
裁判編(1)
『裁判のお時間となりました。捜査を終了し、講堂までお集まりください』
アナウンスに顔をあげ、流れた汗が顎からぽとりと地面に落ちた。
行かないと。
見つかった落とし主。
見つからないアンプル。
深まる謎と、いまだ外に出ることは叶わない絶望。
一度に二人もの人間がいなくなり、それでも捜査は続けられる。何故、彼らは殺されたのだろう。コロシアイはもうしなくて良くなったのに。
良田アリス
姫宮蝶子
螺河鳴姫
「…広くなりましたね、エレベーターも…」
「ほんと、この人数ならいっそ階段で降りてもいいのに」
「はぁ、毎回エレベーターばっかりだったら運動不足になっちゃうよー」
ちらりとエレベーター横の階段を見ながら、そんな軽口でも言わねばやってられない。
関わるのは秘密の手紙か、はたまたそれ以外の理由があるのか。広くなったエレベーターの隙間に、いなくなった彼らの面影を見る。
モノボウズ
「落とし主が見つかり、後はアンプルさえ見つかれば…
それで全て解決するはずだったのに…」
モノボウズ
「いまだアンプルは見つからず、それどころか隠し場所を知る沙梛百合籠も
殺されてしまいました。我々も正直、困っているのですよ」
モノボウズ
「どのみち、この中の誰かが彼らを殺したのです。そして…もしかしたら、
殺した犯人が沙梛百合籠からアンプルの居場所を聞いてるやもしれません」
モノボウズ
「願わくば、これが最期の裁判でありますように」
姫宮蝶子
「同じ場所に被害者が二人…殺し方を見ても、同時に殺したとは
考えづらいですね。犯人はどちらを先に殺したのでしょう?」
江見菜みいな
「死体は百合籠ちゃんのコテージで発見されたから、百合籠ちゃんは
最初からそこにいるだろうし…君野君は後からやってきたところを
殺されたんじゃないのかな?」
栂木椎名
「沙梛さんのコテージでわざわざ君野さんを殺した後で、沙梛さんを殺す…
なんて順番として不自然だしね。無駄にトリックをひねりすぎて
空回りしている駄作のようだよ」
芍薬ベラ
螺河鳴姫
大鳥外神
「駄作かどうかはさておき、その順番は確かに不自然だよね。」
「コテージの中、とっても散らかっていたの…強盗さんでも入った
みたいなの!!ひどいの!」
「沙梛さんは何か詳しい事情を知っていたようですからね…
美録という人物やアンプルについて調べるために、沙梛さんを殺害し
家探しをしていたのではないでしょうか?」
☂ 沙梛百合籠のコテージ
沙梛百合籠と君野大翔の死体が発見された場所。モノクロの家具が最低限揃えてあるだけの、シンプルな造り。室内は荒らされており、大きな段ボールが転がっている他、釘と金槌も落ちている。刃物の類は落ちていない。
アヴェル
螺河鳴姫
栂木椎名
栂木椎名
「荒らされた家に、2人の死体…あれだけ派手に荒らしといて百合籠に
ばれないわけがないし、最初から百合籠を殺すつもりだったのしかしら」
「大翔君は刃物で胸を刺したとして…、沙梛ちゃんの殺し方は時間も
手間もかかるよね。なんでわざわざそんな方法を…」
「沙梛さんに【恨み】でもあったんじゃないかい?ほら、そもそもこの
コロシアイのきっかけの紙切れを落とした落とし主は彼女だったじゃないか」
「ある意味、彼女さえいなければ、僕らは今頃バカンスの真っただ中で、
こんなに人が死ぬ必要もなかった…と考えた人がいるのかもね」
才羅『……動機がなくて衝動的にあんな殺し方ができたとしたら、それは…
…考えたくないだろうな、全員』
大賭清一
「釘を刺されて出血多量で死んだってことは、すぐに死ねなかったって
ことだ。つまり…拷問したってことなんだろうねぇ。
情報を吐かせるためにさ」
大鳥外神
姫宮蝶子
「子供に拷問など……最悪だ…………」
「いえ子供相手でなくても最低でしょう…」
物造白兎
良田アリス
「あんな殺し方をしたら、かなり返り血を浴びると思うです…。
そんな状態で犯人はコテージの外に出ていったのです?
どんなびっくり神経してやがるですか」
「ううん、百合籠ちゃんのコテージのシャワー室、洗った直後だった
みたいでしょ?。
犯人はコテージのシャワーを浴びて、返り血を落としたんだと思うよ」
☂コテージのシャワー室
沙梛のコテージのシャワー室。綺麗に洗われて間もないようで、水滴が残っている。髪の毛や衣類などは残っていない。
芍薬ベラ
「返り血といえば…君野君を殺した凶器って、どこにいっちゃったなの?
コテージには刃物が何にも落ちてなかったの」
江見菜みいな
「犯人が持ち帰ったんじゃないかな?証拠は少しでも残したくないだろうし…」
物造白兎
「刃物を持ち去るなら、金槌と釘ももってけばよかったのに。まぬけなのです」
姫宮蝶子
「釘は壁に打ち付けていますし、回収する時間がなかったのかもしれませんね」
大鳥外神
大鳥外神
「あの…体は洗えるとして服はどうしたんでしょうか…
血まみれの服を着たままじゃシャワーを浴びる意味がありませんし、
沙梛さんの服を着るなんて子供以外無理ですし…」
「う…血のついた服なんて…考えるだけでも……」
螺河鳴姫
「だったら…あらかじめ用意して持ち込んだんだろうね。
沙梛ちゃんの殺し方からして計画犯に違いないよ」
江見菜みいな
「うぅ…計画犯かぁ…」
螺河鳴姫
「皆がお泊り会に行っている隙を狙って、沙梛ちゃんを殺したところに、
大翔ちゃんがやってきて殺した…って感じかな」
栂木椎名
「沙梛さんを殺して、家探しして…ってかなり時間がかかるだろうしね。
突発的な殺人でこんなことできないよ。君野君まで殺してるんだから」
良田アリス
「2人が殺されたのは昨日の午後で、発見されたのが今日の朝でしょ?
かなり時間が空いているから、犯人を絞るのってもちちゃんの時より
大変そう…」
アヴェル
「百合籠の生きてた時間なら、少し絞れるわよ」
アヴェル
「アタシがベラちゃんとお泊り会に行こうとした時、百合籠が家にいたから
声をかけたけど『人と約束がある』って家の中に戻って行ったの」
アヴェル
芍薬ベラ
「少なくともお泊り会が始まるまで百合籠は生きていたのは間違いないわね」
「それなららーちゃんも見たの!プランターのお手入れしてたの!
絶対間違いないのー!」
アヴェル
「だから、犯人を絞るならお泊り会が始まった後にアリバイがない人を
探してみたらどうかしら?」
螺河鳴姫
「お泊り会なら、私が撮った写真なら残ってるよ。
ここに映っている人は、確実にお泊り会に来ていたって証拠になるよね」
☂お泊り会の写真
お泊り会の光景を、螺河鳴姫が写真に撮ったもの。映っているのは、江見菜みいな、大賭清一、芍薬ベラ、アヴェル・幸雲・カルティエ。
良田アリス
「外神君が『お泊り会なんて人が集まる場所に行けない』って言って
かわいそうだから、ご飯持ってってあげたんだ。
そのまま外神君が遊んでくれて、ずーっと一緒にいたよ!」
姫宮蝶子
「お泊り会なら何人か途中で抜けたりしたので、はっきりとは覚えていません
が…物造さんとずっと一緒にいたのは覚えていますよ」
大賭清一
「つまり…お泊り会が始まった後でアリバイがないのって、誰とも一緒に
いなかった栂木君だけってことじゃないの?」
栂木椎名
「…は?おいおい、ちょっと待っておくれよ。まさか、ぼくが犯人だとか
思われているの?冗談キツいな……」
栂木椎名
「お泊り会とか誰かと一緒にいたとか皆言ってるけど、
ずーっとぴったりくっついてたわけじゃないだろう?
大人数なら、しばらく人が抜けても気づかないんじゃないかなぁ?
部屋の出入り口で記録とかつけてたりした?してないよね?」
栂木椎名
「そうだ、アリバイがない人はぼく以外にもいるよ。君野君だよ。
彼の姿は誰も見ていないし、そもそも君野君が沙梛さんを殺した
んじゃないのかい?うん、その方が自然だ。被害者と思われて
いた人物こそが犯人、って王道パターンじゃないか」
江見菜みいな
大賭清一
「し、死んじゃった君野君に罪をかぶせる気…?最低…」
「君野君が沙梛ちゃんを殺した…可能性としてはありえる。
でもさぁ…君野君を殺した犯人がいることは間違いない。
そして椎名君が怪しいことにも変わりないよねぇ」
栂木椎名
「それ本気で言ってるの?自分がいかに浅はかなことを口に出しているか
理解してる?まず頭の中で文章を作ってから喋ったらどうだい?」
栂木椎名
「第一、もしぼくが本当に犯人なら、自分のアリバイくらいちゃんと
作ると思わない?だって、命が掛かってるんだぜ。状況証拠だけで
決め打ちされるのは不愉快だよ」
良田アリス
アヴェル
栂木椎名
「元々ちょっと厭味ったらしい言葉が、さらにねちねちのじめじめに
なってるねー」
「早口でまくし立てて、全然自分の疑いを晴らせる事は言ってこない。
追い詰められた人って皆そういう口調になるの。カジノでもよく見たわ」
「まさか、本当にぼくが犯人だとか言ってるのかよ?
ハハ、ここまで痴の集りだったなんてね……」
才羅『追い詰められてるのか言いがかりにキレてるのか、どっちだろうな』