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Chapter1

Chapter1―2xA+xyB=xyA+2xB
裁判編(1)

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モノボウズ

「捜査終了のお時間となりました。これより裁判を行います。

 至急、講堂へお集まりください」

 捜査するほどに人が死んだ事実を再認識して沈んでいく気分が、そのアナウンスによって一瞬途切れる。

 やっと捜査が終わるという脱力感と、裁判で犯人探しをしなければならない息苦しさが重なり、皆の足取りは重い。

 

 講堂のホールは相変わらずがらんとしていたが、違ったのはモノボウズが一番奥で待っていたことだ。

 ホールの奥には巨大な扉があり、それに近づくと何の扉かはすぐにわかった。

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​姫宮蝶子

「エレベーター…?」

 十数人は乗れそうな大きなエレベーターの扉が、静かに口を閉じて自分達を待っていた。一見ただの扉なのに、これから裁判が起きるという心境からか冷たい空気を感じ取る。

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御透ミシュカ

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アヴェル

「おっきなドア…何人乗る想定で作ってるんだろ…」

「何か大きな機材とかを運ぶためじゃない?ホールに直通なら、

 パーティーとかでたくさん運ぶ必要あるだろうし」

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螺河鳴姫

「会議室にでも案内されるのかな…」

 起動音を響かせたエレベーターは、やがて重たい音をたてながら口を開く。

 進みたくない、けれど進まなければ。この事件を解き明かさねばならない。死んだらぶりのためにも、自分たちのためにも。

 

 意を決してエレベーターに乗り込むと、扉が閉まりゆっくりと音を立てて降下していく。心まで深く深く沈んでいくようで、足の裏から透けて脳天に不穏が吹き抜けるような浮遊感はどこか現実味がない。

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角沢才羅

「…なんで地下なんだよ。まさか倉庫にでも連れていく気か?」

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栂木椎名

「講堂に地下室があるってのも驚きだけどね。何が待ち受けているのやら」

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沙梛百合籠

「…なんだかひやっとするわね。地下だからかしら」

 どうでもいい中身のない会話だ。あえて口にしているのは、落ち着かない気持ちを少しでもなだめる為だろう。何か口にして日常を思い出さないと、帰ってこられなくなる気がした。

 

 ひと際大きな揺れと振動の後、扉が開く。わずかな時間が途方もなく長く感じ、流れ込んできた空気に少しだけ安堵する。

 

 裁判場と言われた場所は、証言台が円形にならんでいるだけのシンプルな構造だった。部屋はさして広くなく、倉庫ほど埃っぽくはないが、日ごろから手入れされている印象は受けない。

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大鳥外神

「裁判とは言っても、実際には議論って感じでしょうし…

 にしてもこの台、ちゃんと消毒してあるんでしょうか…?」

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桜春もち

「なんか、とりあえず形にしときましたって感じがありありですね~!

 倉庫で埃被った臼みたいな古臭さを感じます~」

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音切おとり

「えーと…あ、ベラちゃんとミシュカちゃんが隣だ!よろしくね〜」

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御透ミシュカ

「あ、うんっ!よろしくねっ」

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大鳥外神

「最悪だ……………人は近いし…………裁判とか…………」

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沙梛百合籠

「裁判なんて初めてだわ。上手にできるかしら……」

 名前の書かれた証言台に立ち、互いの顔を見合わせる。席は16席あるのに、1つだけ空いた箇所にどうしたって目を向けてしまった。

 ただらぶりがいないだけでなく、その空席には白黒のリボンで飾られた彼女の写真が立っていたからだ。

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芍薬ベラ

「なんかやな感じなの…らぶりちゃんが可哀そうなの…」

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螺河鳴姫

「らぶりちゃんの視線が痛いな…。」

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栂木椎名

「悪趣味な演出だね」

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君野大翔

「遺影みたいで縁起悪いって…」

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良田アリス

「でも、仲間外れは可愛そうだからね。見守っててもらおうよ」

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モノボウズ

「皆さま、よくぞおいでくださいました。

 これより行いますは、雨土筆らぶり様の殺人事件の裁判でございます」

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モノボウズ

「ルールは簡単。皆さまで話し合い、らぶり様を殺した犯人…

 すなわちクロを見つけてください。最後の投票にてクロを決定し、

 正しければクロは処刑。間違えればクロは外に脱出し、

 代わりに皆様全員に間違えた責任を取っていただきます」

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音切おとり

「ちょ、ちょっとまってよ~クロは処刑って…

 犯人見つけたら、殺すってこと!?」

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​大賭清一

「それにさぁ…犯人間違えたら全員責任って、何するん?

 …って聞くまでもないか」

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物造白兎

「そんなの聞いてねぇです!最初に説明しないなんてずっこいのです!」

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モノボウズ

「人の命を奪ったのですから、命で償わなければつり合いが取れません。

 不可抗力だろうと反省していようと、そのような方を今後島に

 置いておくわけにはいかないのです」

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モノボウズ

「元々この裁判は、この島に忍び込んだ不穏分子を見つけるための…

 簡単に言えば炙り出しです。報酬と罰則を与えれば、皆様必死に

 探してくださるでしょう?私も涙を堪えているのですよ」

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モノボウズ

「ご安心ください。皆さまはただ、か弱い少女を殺した犯人を

 見つけるだけでいいのです。我が主が選ばれた皆さまなら、

 きっと間違えたりしません」 

 信頼と威圧の言葉を履き違え、正義と独裁を取り違えたようなモノボウズの言い様に、文句は漏れても反抗する者はいない。黒い槍で何人も傷を負った光景を思い出すと、口を噤むしかなかった。

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モノボウズ

「それでは、議論を開始してください」

 不安、焦り、恐怖、怒り、悲しみ…様々な感情が入り混じる。この中の誰かが殺人を犯し、それを隠しこの場にいる事実に、向き合わなければならない。

 

 自分の足で立ち、自分の口で発言し、自分の目で見て、自分の耳で聞かないと、誰も助けてくれない。プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、乾いた木槌の音が遠く感じた。

Chapter1

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