chapter4-不安と無音と懐疑心-
chapter4-不安と無音と懐疑心-裁判後編
モノエル
「ふはー、やれやれ困ったちゃんでちたねぇ。
エルの部下はあんな間抜けじゃないでしゅよ」
額に汗などかいてないのに、それらしいぬぐう仕草でモノエルは満足げに息を吐く。
3人も死んだのに、この中に紛れ込んだ裏切り者が誰かは分からないまま。
いや、そもそも本当に裏切り者などいたのだろうか?
モノエルがゆさぶりをかけるためだけに言った妄言なのではないだろうか。
怨みの目線がモノエルに集まる中、その人は言った。
心条裁己
「________ええ。本当に」
先ほどまでの裁判の疲れをみじんも見せず、彼はにこりと嗤っていた。
心条裁己
「あのように分かりやすい証拠、私なら残しませんとも」
紅緑茶
「…は?」
糸色恋花
「?」
黒羽麗
「……どしたん?疲れすぎておかしくなった?」
遠雷紬
「……」
心条裁己
「おかしくなんてなっていませんよ。だって……」
心条裁己
「私がモノエルさんの部下。
皆さんがいうところの【裏切り者】なんですから」
黒羽麗
「…………エ?」
茶渡利三沙
「おやおや……」
心条裁己
「本当に、嘘みたいに騙されてくれていたみたいですね」
遠雷紬
「……なに、お前を殺せばいいの」
黒羽麗
「エ……なに……?みんなで殺せば怖くない……?」
茶渡利三沙
「皆落ち着きなさいな」
糸色恋花
「…暴力には反対よ」
カレブ『リンチ!リンチ!(キャッキャッ)』
毒桃『カレブさん、ハウス』
描成『リ、リンチはよくないんじゃないかなって……あの……』
カレブ『まるで犬みたいな言いようで流石の私も傷つくぞ』
心条裁己
「おや、おやおやおや。わたしを殺す?
……それで、このコロシアイが終わるとお思いですか?」
心条裁己
「わたしは部下の中でもその末端、替えの効く存在に過ぎませんからね」
心条裁己
「わたしがいなくなっても、止まらないということを
ご理解いただきたいですね。無闇なコロシは意味がない」
茶渡利三沙
「君は、今ここで裏切り者であると明かして良かったのかい?
隠し続けることもできただろうに」
心条裁己
「いい加減、巻き込まれた人間として振る舞うのにも疲れてしまいましてね」
糸色恋花
「………元々、人を見る目なんて信じてなかったけど、…………」
黒羽麗
「えー……じゃあ黒幕の名前教えてよ〜。そーすれば全部終わるじゃん!」
糸色恋花
「…黒羽さん、その。…わざわざ弱点を晒すとは思えないわ」
心条裁己
「末端の私です。知らないこともあります。期待に添えず申し訳ない」
心条裁己
「それに」
心条裁己
「わたしが従っているのは、なにもモノエルさんだけではありませんよ。
また別に、偉大な方がおられるのです」
心条裁己
「さ、て。これ以上は皆さんの想像力に委ねましょうか。
思考を柔軟に、知恵を絞ってみてください。その余裕があれば……ですが」
モノエル
「やれやれ、じっとしてるのに飽きまちたか?喋りすぎでしゅ。
まぁいいでしゅけどね。その通り、そこの心条裁己こそが、
エル達の部下、皆しゃまの裏切り者でしゅ~」
心条の肩に飛び乗るモノエルは、座り慣れた様子でそこにいた。
最初から、ずっと、この男は、この笑顔が張り付いたこの男は、自分たちを欺いてきていた。
その事実が肩の上で嗤っていた。
モノエル
「さ、裁判はおしまいでしゅよ。
皆しゃまお部屋に帰って、アロマでもかいでゆっくりしてくだしゃいね!」