chapter6-KASU-TURD-
chapter6-KASU-TURD-裁判後編
茶渡利三沙
「消去法で考えると、私が疑わしく思われるのもわかるさ。
しかし所詮消去法で、確実にそうだという証拠はないだろう?」
茶渡利三沙
「まあ、とりあえず…もう一度よく考えてみてほしい」
面屋敷浪漫
『いえ、記録によれば今日まで黒幕は生きています。
間違いなく、生き残った人の中に黒幕は存在する。』
【健康記録】
参加者全員の健康状態の事細かな記録。死亡した人の箇所にはでかでかと『死亡』と判子が押されている。その中に『黒幕』と書かれたページがあり、本日の健康状態も良好と記してある。…このデータだけでは誰が黒幕か分からなさそうだ。
メアリー
『さっきの名簿ですけど、タツキさんはカウンセラーとして載っているじゃ
ないですかぁ。教会側は彼のことを本当にカウンセラーとして対応してたん
だと思いますよぉ。それに彼が黒幕なら、わざわざ公安と言って場を
かき乱す必要はありませんよねぇ?』
心条裁己
「待て。お前……どうして責任者が【現役の超高校級でないといけない】と
言ったんだ?」
茶渡利三沙
「…君も見ただろう?教会規約にそう書いてあったじゃないか」
心条裁己
「いいや。俺たちが見た教会規約は旧式で【才能の有無を問わない】と
書いてあったんだ。……なのに、どうして断言できたんだ?」
心条裁己
「それはお前が、旧式でない規約……つまり、今現在の規約を知っている
立場だからじゃないのか?」
モノエル
「ふーむふむふむ、容疑者が絞れたようでしゅね。いよいよ投票でしゅ!」
モノエル
「果たして黒幕は誰なのか。黒幕を外せばもちろん皆しゃままとめて
神の元へ送りましゅ。それでは黒幕と思われる人に投票するでしゅ~!」
遠雷紬
「………そうだよね…それでも、私は。三沙の事だいじな友達だって、
思っているよ。
私が、どうしようもない時に……助けてくれたのは三沙だよ」
糸色恋花
茶渡利三沙
心条裁己
「……うん、三沙さんのくれたものが全て嘘とは思いたくない」
「黒幕というが……これは、お前が本当にやりたかったことなのか?」
「人を無暗に信用してはいけないよ。…外さない様に気を付けて、ね」
モノエル
「票が集まりまちた!はたして結果は…」
茶渡利三沙
「もういいよ、モノエル」
茶渡利三沙
「改めまして。 私は茶渡利三沙。
茶渡利家の嫡男にして、当儀式の責任者を仰せつかった一信徒だ。
君達がいう所の、【黒幕】というやつだね」
茶渡利三沙
「此度の儀式は失敗し、天使様は天へ還り、もはや神の威光を穢すばかりの
我々に、本部から中断と破棄の指示が下された。
君達を儀式の贄にすることはもうないから安心するといい」
エリアス
『……。失敗…中断と破棄……勝手なものですね』
描成絵智
『……破棄って……そんな……』
茶渡利三沙
「中断と破棄の決断に関しては、君達とは違った意味で思う所があるが…
仕方がないね、上の方が仰られた決断だ。我らは従うまで」
モノエル
「我々は儀式をまともに果たせない、神に仇なしてしまった者。
政府の犬に嗅ぎつけられた以上、しっぽ切りは当然でしゅ」
茶渡利三沙
「ふふ、そうだねモノエル。尻尾切り…正にその通りだ」
リリー
「…………宗教は勝手だし好きにするべきだと思うけれど、
それを押し付けないでほしいわぁ…」
黒羽麗
茶渡利三沙
『……みさみさの家族は本当にこれで良かったと思ってんのかな?
だとしたらイカれてるよ……』
「ん?家族仲は良好だと思うよ。 家族皆、熱心な信徒さ。
私もそれなりに頑張っているつもりだが、母様たちには敵わないね」
茶渡利三沙
「我々茶渡利家は、代々カスタード教会の信徒として身を捧げ、祈りを
捧げてきた。 先程手紙を見ただろう?息子が大役に選ばれて、父様母様も
本望だろうさ」
黒羽麗
『……勝手に、勝手に人を殺しといて何が祈りだっつーの……くそっ』
カレブ
『酷だ。高校生がやるものではない。
幸福はそれぞれ人によって違うだろうが。うん、度がすぎているな。』
フェイ
『本当の幸いとは なんなのだろうね……』
エリアス
『……何を以て幸福だと仰っているのか分かりませんね』
茶渡利三沙
「……意外と、皆大人しいな? もっとこう、儀式に理解のない一般人は
罵詈雑言を浴びせてくるものだと思っていたのだけれど」
滑川ぐみ
『どっちかというとこの場にいない奴らに怒ってるんじゃないのか、みんな』
カレブ
『唖然としているのさ。ふふ、全くもって思想が理解できんな』
リリー
「……………………私はそれを本人が【本人の意思で望む】なら、
なにも言わないわ…」
モノエル
「何故憐れむのでしゅか?彼はとても幸福な役目をこれから果たす
いうのに」
茶渡利三沙
「おやモノエル、良い事を言うじゃないか。 そう、私は最後までお役目を
果たすまで。所詮信徒でない者には理解されまいさ。分かっていたことだ」
比与森閑古
『役目……?』
琴ノ緒閑寂
『……まだなんか役目があるのかよ』
糸色恋花
「………後味悪すぎるわよ」
茶渡利三沙
「ま、そういう事だから。 一生相容れない、ごく一般的な皆様方。
私は、儀式の実行については後悔していないよ、ふふ」
遠雷紬
「……もうやめようよ。ここにいて、ここにいるのよくないってすごい、
思ったし……。この、苦しいのずっと続けさせるのもよくないよ」
遠雷紬
「まだ……まだ、間に合うから。…私は、あなたも助けたい。
……もう、前みたいな、失敗を……これ以上大事な友達を失うなんて、
したくない」
遠雷紬
「……お願い。…お願いだよ。これ以上後悔に後悔を重ねたくない。
あなたとしたい事たくさんある。」
遠雷紬
「……私の手をとって!」
茶渡利三沙
「…?なんだい、その手は。
紬。【契約関係はおしまい】だ。 ……お疲れ様。」
茶渡利三沙
「はあ…。そこの公安が仲間に連絡を取ったから、そのうち救援も来る。
けれど、探索やら裁判で公安の動きもだいぶ遅らせたから、
時間稼ぎは十分にできたさ」
心条裁己
「連絡がついた割に、救助が来るのが遅いと思った。そういう訳か……」
茶渡利三沙
「…さて、と。モノエル。そろそろ行こうかなと思うのだけれど…
準備は出来ているかい?」
モノエル
「もちろんでしゅよ。束の間の普通の高校生みたいな青春を
楽しめたようでなによりでち」
茶渡利三沙
「青春ねえ…こんなものが青春なら、私は神に祈りを捧げている時間の方が
有意義で良い」
茶渡利三沙
「最期に、儀式に失敗した我らを贄として捧げ、私自身の役目を果たすと
しよう。 それが、神に仕える信徒としての最期のお勤めさ」
心条裁己
「おい、待て!お前には法の裁きを……!待て!!」
心条裁己
「茶渡利三沙ァ!!」
茶渡利三沙
「…じゃあね」
遺品「教徒の羽織」
ほんのり茶の香りがただよう羽織。
信じた末路がどうであれ、信じた彼は救われたのだろうか?