chapter6-KASU-TURD-
chapter6-KASU-TURD-裁判前編
裁判台にあがる22の姿。そこから伸びる影はわずか6つのみ。
二度と息づくことのない彼らの姿を見据え、聞こえない息遣いを感じた。
モノエル
「さて…この最終裁判…最期の審判とでも言えばいいでしゅかね?
ここで暴くのは、このカスタード協会のことそのものでしゅ」
モノエル
「ずっと気になっていたでしょう?それも今日、この時間でおしまいでしゅ。
隠すつもりはないけど、ただ解説するだけもつまらないでしゅからね。
皆しゃまで暴いてみてくだしゃい」
モノエル
「さぁさ、さぁさ。信じましょう、貴方しゃまの行く末を」
描成絵智
『最終裁判……本当に最後なんだ……』
心条裁己
「最後、か……」
モノエル
「まずはおさらいから。ここ、カスタード協会は才能を復興する支援団体。
皆しゃまは招待に応じてここに来たわけでしゅが、この協会のことは
知っていただけまちたか?」
モノエル
「我がカスタード教会は神に仕えし敬虐なる信徒。
神より与えられた才能はこの世で最も尊きものでしゅ。
神に愛された者だけが受け取れる特別なギフト、それが才能なんでしゅよ」
毒桃京知
『才能を崇めるんなら、なんであたしたちみたいな【元】ばっかり
集めたわけ?現役に声をかけたらいいじゃない』
琴ノ緒閑寂
『元超高校級について書かれた資料があったな……』
遠雷紬
「…元超高校級の事を空っぽの身体って書いてあって…それが必要?みたい」
【元超高校級】
元超高校級についての資料。
「超高校級とは、才能に満ちた身体を持つ存在。かつての才能を失った空っぽの存在を、元超高校級と呼ぶ。我らには空っぽの身体が必要だ。才能を受け入れるだけの器であり、それが抜け落ちた残りカスの彼らであれば、儀式は成功するかもしれない」
糸色恋花
「図書室の本棚に散々宗教のどうとかカスがどうのとかご丁寧に
書いてあったけど」
エリアス
『…こちらで過ごしている間、宗教色が強い様子は肌で感じておりましたね』
心条裁己
「神に縋って得たものに価値があるのか、どうか……」
花柳玲子
「儀式…とやらのために、わざわざ元超高校級…それも、一度は活躍し
経歴のある私達が集められたわけねぇ。
で、その儀式ってのはいったいなんなのかしら?」
踊瀬舞円華
『多数の人を幽閉して命を懸けて殺しあう…嫌な儀式だね』
比与森閑古
『神を降ろすとか、よくわからないことが書いてあったけど…』
面屋敷浪漫
『最後の一人を器にするとか、言っている事がよく分かりません』
【儀式】
カスタード教会で行われる儀についての古い記録。
「神の恩恵をより受けるため、神を降ろす儀式を行う。そのための器が必要だ。
選ばれた者達を一か所に幽閉し、命を懸け、最後まで生き抜いたものを
器としよう。これをコロシアイと名称する」
描成絵智
フェイ
琴ノ緒閑寂
リリー
『なんか……蟲毒みたいですね……』
『やはり君もそう思うか……』
『……コドク?』
「…………?難しいニホンゴね。」
糸色恋花
「まあ…要するに、私達は神…とかいう物を降ろす器、有り体に言えば
儀式の生贄として集められたって事ね?」
モノエル
「はい、貴方しゃま方は【選ばれた存在】なのでしゅよ!
神の器になれるかもしれない逸材…エル達はたくさんの元超高校級を
探して、君達の招待状を送ったのでしゅ!」
モノエル
「今までいろんな贄を用意しまちた。現役の超高校級、才能がない一般人、
未来溢れる子供、人生を味わい尽くした老人、屈強な肉体、妖艶な美、
深淵を覗く知…けど、全部だめでちた。
儀式の成功は我らが悲願、なんとしても達成したいんでしゅよ」
遠雷紬
「……選ばれて死んだの?」
メアリー
『勝手に選ばないで欲しいんですけどぉ……』
黒羽麗
『そんなのに選ばれても全然嬉しくないんですけど〜』
滑川ぐみ
「……いっぱい集めて殺し合わせたらいちばんいいのが残る?ってことか?」
ユウヒ
毒桃京知
『腹立つ蠱毒だな』
「そんなの…才能の復興なんて、全部嘘じゃない!
最初から人殺しをさせるために集めたなんて…
こんな奴に騙されて、死ぬなんて…」
モノエル
「人聞きが悪いでしゅねぇ。人殺しじゃなくて儀式でしゅ。
神の器となればきっと素晴らしい才能に満ち溢れるでしゅよ。
それに器になれない連中は、せっかくの才能を手放した無能でしゅ。
生きてることが冒涜みたいなもんでち」
モノエル
「神の器になれない君達なんて絞りカスでしかないんだから」
遠雷紬
「……カスって言わないで」
琴ノ緒閑寂
『それこそカスみてえな事言いやがるわ』
茶渡利三沙
「…はは、言葉が過ぎるよモノエル」
リリー
「神様…………カミサマね………はぁ……ほんっと嫌い………嫌な話……」
糸色恋花
「信仰は人それぞれだけど強要されたくはないわ」
滑川ぐみ
『……わたしはもういちど、誰かを笑顔にできると思ったから……』
花柳玲子
「御託はいいから、裁判をすすめましょう。
この教団の本性と、私達が集められた目的はわかったわぁ」
花柳玲子
「それで…結局、死んだ彼らがこうしているのは、どういうことかしら?
……まさか降霊術とか言わないわよねぇ?」
黒羽麗
『その辺に置いてあったんだけど、 教会には独自に作った薬があるっぽいよ』
リリー
比与森閑古
「幻覚作用や依存性があるみたいだけど…………薬ってちょっと嫌ねぇ」
『普通に置いてあったけど……紅茶とか香に希釈して使ってるって…』
【特殊調合薬】
カスタード教会による特殊な調合薬品。
心条達の調べによると、強い幻覚作用・依存性があり、普段は希釈して紅茶やアロマとして提供しているようだ。濃度が高くなるほど作用は強くなる。
メアリー
『危ないオクスリじゃないですかぁ』
糸色恋花
描成絵智
カレブ
「………違法薬物と同じ類じゃないのかしら」
『……こんなすぐ近くにあったなんて……』
『ふふ、恐ろしいものだな』
琴ノ緒閑寂
『……俺たちが毎日飲んでいた紅茶には、この合法かも怪しい薬品が
使われてた、そのせいで紅緑のことをずっと存在すると思い込んでいた』
『……今の俺たちも紅緑同様の存在……幽霊やら本人じゃない。
…………あのアロマのせいで見える【幻覚】なんだろ』
琴ノ緒閑寂
エリアス
『色々な意味で"アウト"な感じではございますね…』
黒羽麗
『毎日お茶会やってたのってただのケーキ食べ放題ってワケじゃ
なかったんだね……』
リリー
「……………………幻覚……か…」
モノエル
「幻覚なんて寂しい言葉を使いましゅねぇ。香によって余計なことを頭から
とっぱらって、清らかな目になったから普段見えない者が見えるように
なったんでしゅよ」
糸色恋花
「それ新興宗教のありきたりな謳い文句ね」
心条裁己
「物は言いようだな」
面屋敷浪漫
『ドラッグの方がしっくりきますね。』
モノエル
「紅茶と香は、ずーっと今までの儀式でも使ってきた大事なものなんでしゅ。
それを非合法なドラッグみたいに言うなんて、ひどいでしゅ…
天使しゃまだって、参加者に混ざって我々を近くで見守っていて
くだしゃったのに」
カレブ
『言葉を良いように紡いでるだけだな』
花柳玲子
「…結局こいつらは、自分にとって都合のいい天使像を勝手に解釈して
動いてるエゴ集団なのねぇ。
…ま、幻覚の言うことを聞いてたのは、私達もだれど」