*番組録画はPC版でご覧ください
chapter3 非日常編 ―路面音と自由離島―
突如して広まった謎の風土病(?)
原作オマージュも甚だしい絶望病がじわじわと広がる中のこと。
そろそろ冬が来ると誰かが呟き、風は冷たく脇を通り抜けていく。
人影が減り風通しが良くなった寮がもの寂しく感じる。
肌寒さを感じた時には温もりが一番。
現状においてもっとも手っ取り早く癒されるぬくもりと言えば、寮にある大浴場であった。
そして今日も浴場へ向かう生徒が一人。

神楽坂棗
やっぱお風呂入らないとやってられないわ〜
シャワーだけとかまじ無理み〜!

神楽坂棗
久々に大浴場いっちゃお〜!!
絶望病に未だ罹患したじゃぐらざか棗の、のんきな鼻歌が静かな廊下に響く。
湯気の立ち上る暖かな湯を恋しがり大浴場に向かう際、必ず通りかかるのがフリースペースだ。
この寮の構造上、奥の倉庫や焼却炉に向かう際に自然とフリースペースを覗くことになる。
普段はそこでくつろいだり湯上りに休んだりしているのだが、そのソファに誰かが座っていた。

神楽坂棗
え〜こんな時間にだれだろ〜??
ちょっと気になるンゴ〜(近づいていく)
ソファに並ぶ二つの影、それは――――。

神蔵亜楽汰と、彼の肩にもたれかかる夜亡墓場の姿がそこにはあった。
規則正しく聞こえる呼吸音が相まって、なんともゆるやかな光景となっている。
二人の仲は周知ではあるが、こうして人前で恋人らしくくっついてる場面などそうはない。

神楽坂棗
え〜ちょっとちょっとちょっと〜!!(ひそひそと口元を押さえながら)
寒さが応え始めるこの時期にほんのりと暖かな光景に、思わずほっこりと眺める。
そんな神楽坂の後姿を見かけ、怪訝そうに声をかけてきたのが貴花比嘉であった。

神楽坂棗
ん、戦争マニアくんじゃーん、どうしたのそんな顔しちゃってー!

貴花比嘉
おい…何してる神楽坂、大人しく寝なくていいのか。

神楽坂棗
え〜ずっと寝てたら頭おかしくなるっていいじゃーん

貴花比嘉
お前はもうおかし……、それはまぁ置いといて何を見ていたんだ?
貴花が興味なさげにちらりとフリースペースを見たときのことだ。
死体が発見されました。死体が発見されました。
一定の捜査時間の後、『学級裁判』を開きます。
突如として響いたアナウンスが耳に突き刺さる。
今、なんと言った?

神蔵亜楽汰
……ぁ?うっさいな…。
何が…あったんや……?
ぐらりと肩に伸し掛かった彼女の体がゆれ、そのまま重力に導かれるように彼の膝へ落ちる。
一見すれば膝枕で眠る彼女は、目を開くことはない。


神楽坂棗
え、ちょ…寝てるだけなんじゃね…

神蔵亜楽汰
………何、いや何で死んどんどいや、なぁ…!
騒ぎに駆けつける者達の足音。
一瞬にて冷たいものが背中を走り、地面に落ちるより先に、もう一つの音が響き渡った。

板張硝子
うわぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!
尋常でない恐怖を孕んだ板張硝子の叫び声が、倉庫より更に奥…焼却室から聞こえてきた。
ぽっかり空いた扉に駆け込む生徒は、尻もちをついて呆然と炉を見つめる板張の後ろ姿を見るだろう。
がくがくと体を震わせ、浅黒く焼けた肌は明確に青ざめ、震える指で炉を刺した。

板張硝子
...ぁ......あ......

神蔵亜楽汰
っ、今度は何やねんクソ。情報畳み掛けんなや…
ごうごうと紅く室内を照らす炉の口は、火花を散らせながら中身を焔の牙でかみ砕いている。
その炉が映す影が照らされる…。
酸味を伴ったべったりとした空気、焦げた肉と脂の香りが肺を見たし吐き気をこみ上げさせ、たまらず数歩後ずさる。
ぱちぱちと脂肪の弾ける音、ちりちりと皮膚が焦げる音。
耳だけ済ませれば台所で聞きそうだと現実逃避したくなる、そんな音の真ん中にそれはあった。
だらりと力なく垂れ下がった腕が、魔物に飲み込まれるようにずるりと焼却炉の向こう側へ吸い込まれていった。
死体が発見されました。死体が発見されました。
一定の捜査時間の後、『学級裁判』を開きます。
そのアナウンス音が、否応がでも貴方達に知らしめる。
それが、少し前まで自分達と共にいた誰かだと…。


モノホネ
ははぁ~…今回もまた悲劇ですねぇ。
愛しあう二人が引き離されるのは、胸が痛みます。

モノホネ
そんな胸を締め付けんばかりの悲しみを生み出したのは、
まぎれもなくこの中にいるのですがね!

モノホネ
ささ、お待ちかねのモノホネファイルでございます。
今回は何やら、不思議なファイルですねぇ。



モノホネ
うぷぷ…皆様もファイルを見る手つきが、慣れたものになってきましたね?だんだんクセになってきました?さぁこれより捜査期間です、皆様がんばってらっしゃいませ

神蔵亜楽汰
……勝手に居らんなんなや…(小声で呟く)

板張硝子
ぅ......ぐ...... (口元を押さえながら蹲っている)

千夜よだか
…………ゔ……(口を抑えて)

砂六々子
…? (ヨロヨロと現れる)

神蔵亜楽汰
……っ………捜査、するしかあらへんわな…

万針集
…なんでまた、こんなことなってるの も、やだ、やだぁ…なんでぇ…(ふらふらのまま廊下に座り込み泣き出し)

夏露島陽向
……そうか、……嫌なものだな…。
モノホネの声がからからと鳴る。
どうして、なんでまたこんな思いをしなければならない。
祈りの願いも届かず、未だ救助もこない。
ましてや、死体を愛する者の肩に寄り添わせるこれを非道と呼ばず、なんと呼ぼう。
互いの顔色を探り、3回目の事件が幕をあげたのであった…。
chaptr3非日常編―路面音と自由離島―
開幕



遺品「人工声帯」
名もなき才能亡き一般人が遺した、ようするにゴミ。