＊番組録画はPC版でご覧ください
本当のプロローグ ②
モノホネ
おや……水叉様、小動物のような挙動をさんざんしておいて……そんなプロレスラー並みの暴力が出来るとは！ 見ましたか皆様？ 今の物凄い拳！
モノホネ
いやあ、相当猫を被られていたようですね。流石超高校級の自衛官候補生……いえ、『超高校級の自衛官』、の候補生様ですね。
モノホネ
人畜無害な顔をしておきながら、すぐ嘘をつき、自分をそんなに可愛く見せたかったんですかねぇ……
腹黒豹変ショタなんてそんなっ！ どれだけ要素を取り入れたがるんですかっ！ このぶりっこ！悪魔！鬼！ゴミ箱がお似合い！
水叉夜紗
さっきから……ずっと前からそうだ、お前は…お前たちは、こ、ここにいるみんなのこと……ゴミだとか、要らない…だとか……。
水叉夜紗
そんなわけないッ！
水叉夜紗
そんな言葉で、貶していいわけがないだろ！
水叉夜紗
皆さんの才能は……そもそも、皆さんは、素敵な方たちです！ その才能がゴミだとか、要らないだとか、好きとか嫌いとか……
水叉夜 紗
俺はゴミかもしれないけど、皆さんをこれ以上侮辱して、…こんな、形で、傷つけるのなら、黙ってなんていられません！
芦名秘
水……叉君……っ
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喪々部千端
……………………夜紗様。
御灯舞
………………、…………。
御先丹道蔵
水叉様…… 。
神楽坂棗
･･････水叉くん。
モノホネ
おや
モノホネ
おや、おや……おや？
モノホネ
おやおやおやおやおやおやおやおやおやぁ？？？？
モノホネ
こんな序盤に……嫌な目立ち方は控えて頂きたい。
モノホネ
これは……良くない傾向です。
スクリーンモニターに映し出される水叉夜紗のライブ中継に、ちかちか光るコメントが流れる。
夜紗くん.......ほんと....もうすき....しんどい....
やしゃしんだらほんま許さんからなボケ
全私が1976831579回惚れた
こんなん限界女オタクになってまうやろ
水叉君かっこよすぎる……
心臓に来るこの展開……しんどいすき……
おいイケメンかよ～～～
モノホネ
これは……良くない傾向です。
水叉夜紗
…………っ、な、何……
モノホネ
…………全く。放送事故ですよ。
モノホネ
……ええ……本当に……ゴミ箱には、不要な存在ですね。
超高校級の自衛官様。
モノホネ
貴方の参加資格を剥奪致します。
ゴミ箱に必要なのは、ゴミなのです。
モノホネ
ええ……ですので
モノホネ
ご立派な自衛官様、あなたは、いらない。
モノホネ
ええ、視聴者様は、そう感じていらっしゃる様子です。皆様も、そう思うでしょう？
モノホネ
ご退場願いまーぁす。
モノホネの瞳が怪しく光る 刹那、また、玩具のように短い音が、ほんの一瞬耳に響く。
水叉夜紗
…………え
水叉夜紗
は…………っ、うあ、あああああああッッ！！！！
柔らかく硬い何かが地面にごろりと転がり、血の足跡をつけていく…いや、手跡というべきだろうか。
白い指を備えた白い手の甲と平、それを繋ぐ手首が歪に裂かれ、
断面から伸びた神経がべしゃりと血だまりに垂れていた。
赤羽望美
........夜紗くんっ！！！！！！
砂六々子
あ、あ…(へたりこむ)
板張硝子
・・・・ッ！？
モノホネ
皆様、慌てなくてもいいじゃないですか。これは番組です。最後まで楽しみましょう。ネタバラシのその時まで。
神楽坂棗
言ってること全然理解できないよ･････････
鈴乃メアリー
…。
水叉夜紗
っ、あ……う、うぅ、……うぅ、は………
まだ、やだ、いやだ、嫌だッ！！
水叉夜紗
夜亡さんも、皆さんも、俺が守るんですッ！
これ以上、苦しい思いも怖い思いもさせません！
なくなった肘先で拳を作るかのように腕を振り上げ、群がる骨達へと足を向ける水叉。
モノホネ
満身創痍でも戦うなんて……ううっ、なんて力強いことでしょう！ 手がなければ足を使えばいいじゃない！
その小さな手で何かを掬うことはもう叶わない！
しかし彼はその足で次々と脅威に立ち向かう！！
喪々部千端
…………死ぬ気ですか？
万針集
なん、で、こんな……
水叉夜紗
理由……理由、なんて……
モノホネ
何を彼がここまで突き動かすのでしょう！ 過去編なんてございませんが実にふかぁい闇がありそうなヨ・カ・ン……
万針集
…(黙って見ている)
水叉夜紗
例え、誰が、意味がないって、ばかだって、笑っても……そ、それでも…！！
水叉夜紗
俺は知ってます、苦しんでる人や、助けてあげないといけない 人を、助けてくれる、誰か達を…！
水叉夜紗
誰かを、守ることが、一番……かっこいいからに、決まって、
ます！！
水叉夜紗
俺は、その誰かに……ずっとずっと、憧れてたんです、俺が、かっこ悪くても、弱くても、それでも！
最後のスケルトンに、彼のブーツのヒールがめり込む。
スケルトンのカタカタと言う笑い声が、ぽつりぽつり聞こえて、
コツコツというモノホネの笑い声が重なった。
からからから
カラカラカラカラカラカラカラ
そしてーーーーーーーーー。
――鼓膜の破けそうな程の爆音だった。
爆音、痛いくらいの熱風。
今しがた目の前で爆発した骨の欠片が、ぱらぱらと床に散らばる。
その中心で倒れているのは 腹部を大きく損傷し――もう動かない、変わり果てた水叉夜紗の姿だった。
モノホネ
おやおや、案外地味～に終わってしまいましたね。予定では、ゲスト様半分が被害を受けて、二人が致命傷の、ワックワクの保健室イベントのはずだったんですけども――
モノホネ
爆発間際にスケルトン爆弾を抱きかかえて被害を最小限にしましたか。咄嗟の判断にもお強いんですね。感動で涙が出てきそうです。
うう。うう。。水叉様が死んだ！このひとでなし！
モノホネ
彼の尊い犠牲により、皆さんは……おっと、テンプレすぎてちょっと視聴率が下がり始めました。やっぱり爆発オチってウケが悪いですねぇ。しくしく。爆発オチなんてさいてー！
モノホネ
……あ あ、おっと。水叉様には近寄らないようにお願いいたします。ほら、今規制が厳しいので！ 早く処理してしまわないとさらに放送事故重ねてしまいます、はわわわ！
モノホネは顎の骨をカタカタ言わせながら、小さな体でよいしょよいしょと水叉夜紗を背負う。
小さな体がずるずると引きずられていく。
まるで映画の小道具のように動かない彼の姿は人形のようにも見える。
モノホネ
まあ……丁度いい機会であればよかったのではないでしょうか。
皆様、どうか視聴率を下げたり、リスナーの皆様を飽きさせないようにしていただければと思います。
モノホネ
でないと……そのために、私共スタッフはどんなことでもする力があるのです。それを、どうぞ
モノホネ
お 忘 れ、なく
モノホネが舞台袖に消えたあと、しばらく動ける者は誰もいなかった。
脇を通り抜けていくモノホネドクターが、担架に夜亡墓場を乗せるのを見て、ようやく時間が動き出した気さえした。
爆炎の熱と立ち込める硝煙、そこにまざった血と脂の匂いにべたつく肌。
ああこれは、
これはいったい。
自分たちはいったい、何に巻き込まれてしまったんだ。
遺品「ゴミバコからこぼれた腕」
ゴミと呼ぶにふさわしくない人物が、ゴミ箱の外に伸ばした手。
その手は何もつかめず、指先は何にかかることなく地面にぼとりとおっこちた。