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閑話休題―納涼！肝試し― 砂六々子編
砂六々子の目に映る廊下は、いつもと同じはずなのにどこか違うようにも感じられた。
彼女の背丈が元々低いこともあるが、いつもより暗闇に紛れた輪郭が、空間の境界をなくし
ひとつの大きな暗闇となって待ち受けているようだ。
砂六々子
わー！暗いっす！確かにこれは懐中電灯が必須っすね！
？？？
なんと！！！？大丈夫か！！？男！？女かよくわからん人！！！
肉がはがれているぞ！！！！保健室行くか！！！？
砂六々子
って、さっきから視聴覚室が騒がしいっす…
まさかホントに出たとか…？？
１階の奥から響いてくる声にびくりと肩を跳ねさせ、背筋が冷たくなる。
実際は誰よりも騒がしい男の仕業なのだが、そんなことを露知らぬ少女は近くの教室に
逃げ込む様に滑りこんだ。
１－１
壁に貼られた無意味な時間割と、未使用のはずなのに薄汚れた黒板。
日常をこれまで送ってきたような光景が逆に違和感だ。
砂六々子
改めて見るとブキミっすね…
薄汚れた黒板を照らすと、うっすらとだがチョークで何かが描かれている。
消しそんじにも見えるその文字をかろうじて読むと「あかずのま どくろのひだりほほ」と
書いてあるように読めた。
砂六々子
あかずのまどくろのひだりほほ」……？ うーん？モノホネのほっぺを調べるっす？いや、そんな所にナナフシギはないっすよね…。
？？？
大丈夫か！！！？生きてるか！！？む？？なんだ！？映像か！！？映像なのか！！！俺はそっちまで行けないぞ！！！出てきてくれ！！
砂六々子
なんか今めっちゃでっかい声が…陽向サンっすねあれは。
視聴覚室っすかね…？
視 聴 覚 室
教室のさらなる奥の部屋へと足を延ばし、扉の隙間からそろりと中を覗く。
照明のない部屋の中、スクリーンの電光が部屋を照らし人影を浮かび上がらせている。
夏露島陽向が、スクリーンの中の不気味な映像に向かって塩を突き付けている光景が目に飛び込む。
砂六々子
…？？？？？除霊でもしてるんすか？ (宇宙猫顔)
夏露島陽向
おおーー！！ゴム子！！この人をスクリーンから出そうと奮闘してるんだぞ！！！！塩が効かなかったし、なんかぺらぺらの人にあくびされたぞ！！！
砂六々子
呆れられてるっぽいっすよ…？ なんかこう、ヒントが書いてあるのとか見なかったっすか？ こう、黒板とかメモとかに…。
夏露島陽向
…なんでだろうな！！！！！ んー？？んーーーー…塩！！！！(サムズアップ) たぶんなんか体育館にそんな感じのものがあった気がするぞ！！！！たぶん！！！！
砂六々子
ふむふむ、体育館…そこにはなんて書いてあったんすか？
夏露島陽向
ん？？？そんなのあんまり覚えてないぞ！！！
なんかこう、綺麗な塩〜……水か！！！！！！！(閃き)（ダッシュ）
砂六々子
ななな！？どうしたんすか！？
ともあれ、ジブンも一緒に行くっす！
夏露島陽向
塩水を作るわけなんだがどこに行けばいいと思う？？
やっぱり保健室か！！？
砂六々子
塩水で悪霊退散す？ 保険室なら確かに蛇口はあるはずっすよね！
水をためる容器も何かありそうっすし行ってみるっす！
夏露島陽向
よーし！！いざ保健室！！！ゴム子！！こい！！
(おんぶするぞという態勢)
砂六々子
そいや！(ぴょいーんと飛びつき)
合体したゴム子陽向号は、肝試しに似つかわしい足音でどたどたと保健室へ向かった。
お目当ての水道にたどり着くと、そこらへんにあった紙コップ（検尿用）を掴み、意気揚々と
塩と水をぶち込んだ。
砂六々子
あったっすね、水！これで塩水をつくって持ってくわけっすね？
モノホネ、水もってくっすね！
夏露島陽向
よーし！！ならさっきと同じようにおぶって走るぞ！！ゴム子！！！こい！！！
颯爽とやってきて、颯爽と立ち去った二人を見て、モノホネドクターは思った。
「遊園地じゃねぇんだぞ…」と。
砂六々子
わーい！陽向号発進っす！ といってもすぐそこなんすけどね！
この塩水、どうするっすか？
夏露島陽向
だな！！！ ん？？？そりゃもちろんかける！！！！
ライトに反射した飛沫がきらめく向こう側、スクリーンの中のそれは耳を劈く悲鳴をあげた。
ノイズがより一層激しくなり、やがて砂嵐になったのちにぶつりと途切れ何も後には残らない。
砂六々子
おわ！退治できたっぽいっす！
夏露島陽向
なんと！！！！！スクリーンから出てこれるんじゃないのか！！！！？？？(アホな顔)
モノホネ
あーーー！！機械に水をかけるなんて！しかも塩入り！！
プロジェクターの近くにいつの間にかいたモノホネは、修理するの大変なのにとしょぼくれながら、
１枚のDVDを渡してきた。