
*番組録画はPC版でご覧ください
閑話休題―納涼!肝試し― 御先丹道蔵編

御先丹道蔵
……行きますか……。(そこそこに嫌そうな顔をしている)
本当に七不思議なんてあるんでしょうか……?
体 育 館
きゅっと足音を立てて扉をあければ、室内の隅や舞台の上は入り口からではライトで照らしきれない。
広々とした空間は、一歩踏み出しただけではその全容は把握できず、進むしかないだろう。
……誰か先にきているようだ。

御先丹道蔵
だ、誰かいらっしゃるんですか……?
暗闇に包まれた体育館の中で、何者かの気配を感じる。しかし足音は聞こえても、その姿は視認できない。

???
????塩だな!!!!!塩はどこだ!!!!!
塩ーーーーーー!!!!!

御先丹道蔵
!?!?
突如して響いた声にびくりと肩をすくませるも、聞き覚えるのあるヒーローの声に御先丹は汗をぬぐった。
声をかけるより先に体育館を出ていった音を聞き、せわしない人だと苦笑する。
舞台の方へ眼を向けると、朝礼でお馴染みの舞台は、あがってしまえばなんてことのないただの高台だ。

御先丹道蔵
……やはり、体育館の怪談なんてそうそうありませんよね……
怪談といえば……。
1階男子トイレ
怪談の定番といえば、トイレ。お約束の場所に足を向け、一人夜の校舎を進んでいく。
男子のためだけの場所。むき出しの小便器が冷ややかに鈍く光を反射する。

御先丹道蔵
どなたかいらっしゃいませんか〜……
って、居るわけありませんよね……。
こつりと硬い足音を響かせるだけで、それ以外の音は何も帰ってこない。
静かに、一歩一歩踏み出し、扉を開けど誰もいない。肩透かしを食らったような気分で扉を閉めた。

御先丹道蔵
うーん、怪談といえばトイレのイメージがあったのですが……
アテが外れましたね。二階に行ってみますか…。
2-1
広すぎず狭すぎない、学生たちが本来過ごすべきスペースががらんと口を開けている。
誰かが手招きしているような、そんな寒気が脇を通り抜ける。

御先丹道蔵
そういえば、席が増える怪談があると言っておりましたか…
お客様用でしょうか……?1つ、2つ…
この教室は自分たちの教室、つまり16人分の席があるはずだ。
ふとモノホネが言っていた噂を思い出し、席の数を数えてみた。
1,2,3…15,16、17…17? 一人分、席が多い。

御先丹道蔵
ふむ、確かに増えていますね……
一時的に誰かが運び込んだかあるいは……
『増える席』
暗闇の中で姿が曖昧な、17番目の席の近くに座る。
いないはずの17人目がそこにいるよと言わんばかりに佇む席は、誰かが其処に座っているかのような錯覚に陥る。
いや、錯覚ではない。そこに誰かが、座っている。
その影は机に突っ伏しているようだ。

御先丹道蔵
ええと……こんばんは?どうかなさいましたか?具合が悪そうですが……私に手伝える事があればなんなりとお申し付けください。
かけられた声に反応するかのように揺れる空気。
その何かが深く、肺の中の空気を全て吐き出すように、深く息を吐いた。

モノホネ
いやぁ~いいですねぇ、学生の席!この懐かしい感じ、たまりませんねぇ…私もたまには教員…っていうか司会者じゃなくて、学生気分に浸りたいものですねぇ~。
机にべったりと伏せたモノホネだった。

御先丹道蔵
ああ、モノホネでしたか……。ということはやはりこの席も貴方が運び込んだ物なんですね……

モノホネ
はい、私が私による私のための席をご用意しましたが、何か?
ちょっと懐かしむセンチメンタルな悪戯心じゃないですか。

御先丹道蔵
まあ真相はともかく、これが七不思議として数えられるのであれば印を受け取っても問題ないと思うのですが……どうでしょう?

モノホネ
印?んー…なんかただ席が増えてるのを見つけただけであげちゃうのもなぁ~。そうですねぇ…私、あるものが好きなんですよねぇ。そのあるもの、持ってきてくれたら考えないでもないですよ。あーお腹すいたなぁ…

御先丹道蔵
あるもの……?例のクッキーですか?よく分かりませんが……
あれば持って参りますので少々お待ち下さい。
御先丹が廊下へ出ると、どこかで騒がしい声がする。
同時に何かを追いかけるような走り抜ける音が暗い廊下に響いた。
男の声と女の声が混じり、喧嘩とは違うが焦ったような声な気がした。
『まって!!ひめ、おねがいまって!!』

???

???
ちょ、待たんかいや!

御先丹道蔵
……?何かあったのでしょうか? 喧嘩ではなさそうですが……。
声を気にかけつつも、家庭科室の扉に手をかける。
おおかた 、肝試しの余興で騒いでいるだけだろうと、適当に理由をつける。
あるいは、そうであればいいとどこかで思いながら。関わりたくないと思いながら。
家 庭 科 室
食器棚に並ぶ食器は生徒の数にいくつか予備を加え、そこそこの数が揃っている。
1つ1つ丁寧に見ていくが、特別変わったものは見当たらない。
冷蔵庫の中に謎の肉が入っていることもなく、棚にもごく一般的な塩や砂糖といった調味料が並んでいる

御先丹道蔵
まさか調味料が食べたい……なんて事はありませんよね。
うーん……どこにあるのでしょうか……
隣の家庭科準備室へ移動し、クッキーを目当てにライトをまわす。
棚の中に茶番裁判でも見かけたモノホネクッキーを見つけることができた。

御先丹道蔵
あ、確かこれですね。ええっと、賞味期限は……大丈夫そうですし、機嫌を損ねないうちに持って行きますか……。
2-1
御先丹戻るが早いか、増える席のモノホネはそわそわとしはじめる。
暗闇の教室に一人座りじれったく揺れる骸骨、正直不気味だ。

モノホネ
くんくん…あまーい匂いがしますね、私のだーいすきな
あまいものの匂いがしますね。

御先丹道蔵
お待たせしました。こちらで間違いありませんね?
さあ、どうぞお召し上がり下さい。

モノホネ
や、差し入れですか?数いるモノホネの中でも、私がお菓子好きなことを知ってるとは、さすがは超高校級のドアボーイ。相手の気持ちを察することには長けていますねぇ?
真暗な教室にいるのも飽きてきたので、ぼちぼち帰るとしましょう。
モノホネはどこからかスプーンを取り出し御先丹に手渡したあと、ぽてぽてと帰っていった…。
